パニック障害のメカ二ズム
=パニック障害のメカ二ズムの要約
パニック障害(PD)について、これまで、検討したことをまとめてみる。そのことによって、薬物療法とか、他の認知行動療法でも、治りにくかったパニック障害に対して、なお、自己洞察瞑想療法で、治療を行う、その理由がわかるように、説明したい。
パニック障害は、激烈な症状がいっせにおしよせる、そして、それがために、予期不安(いつ、発作が起きはしないかとびくびくしている)と広場恐怖(種々の場所に行けなくなる)を伴うことが多い。その不自由さのために、学業、仕事、家庭生活に支障をきたして、「うつ病」を併発することもある。パニック障害についての、脳神経科学の研究から、わかってきたことはおよそ、次のとおりである。
- パニック障害
(パニック障害には、自律神経(特に交感神経)の過剰な亢進とみられる症状がいっせいにおしよせる。激しい動悸、心悸亢進、心拍数の増加、発汗、身震いまたは震え、息切れ感または息苦しさ、窒息感、嘔気など。)
- パニック障害の再発
(パニック障害は、薬物療法だけでは、ある程度症状が軽くなっても、2、3割は、治らないし、4、5割は、症状が残っている人がいる。予期不安、広場恐怖などが残るが、何か脆弱性が潜在化していることが推測される。PAG(中脳水道周辺灰白質)の亢進、前頭前野、セロトニン神経の抑制機能の低下が推測される。)
- 自律神経ストーム
(自律神経ストームという症候群があるが、パニック発作と似た症状が多い。自律神経ストームは、交感神経機能亢進が顕在化して存在しており、何かの刺激で、自律神経が異常な亢進を起こすものであると推測される。自律神経は、上位の大脳辺縁系、橋、延髄などの連絡を受けていて、上位の機能亢進または低活性によって、自律神経ストームが起きることが推測されている。それら、上位の機能は、感情、思考(認知、特に予期不安、破局的な広場恐怖との結合)と関連が深い領域である。PAG(中脳水道周辺灰白質)が責任部位ではないかと推測されている。)
- PAG(中脳水道周辺灰白質)の亢進
(疲労する運動後とか、就寝中にも、発作が起きることがあるので、パニック発作は、心理的な問題ばかりではなくて、脳部位のいずれかに障害(亢進または機能低下)がある可能性がある。PAGが責任部位ではないかと推測される。こうして、前頭前野の機能低下、PAGの機能亢進によって、パニック発作が起きて、前頭前野の抑制機能が弱くて、発作を持続させ、パニック障害に発展していた可能性がある。)
- 予期不安
(パニック発作を経験した人のすべてが、予期不安、広場恐怖に発展するわけではない。それに発展する人には、何かの機能亢進か低活性化が起きている可能性がある。まず、予期不安は、認知(思考)、情動が関連しているのだが、前頭前野の低活性化が起きているようである。前頭前野の制御機能が十分ではないために、予期不安の思考、不安の感情が起きやすい。これが予期不安である。実の発作でなくても、何かの身体症状や感情的になる出来事から、自律神経機能の亢進による身体症状を感じた時、発作をおそれる思考を抑制できずに、感情をたかぶらせることが、責任部位を亢進させて、発作がおきてしまうと推測される。)
- 広場恐怖(1)
(次に広場恐怖であるが、PTSDと比べて破局的な出来事(生命の危険は実際にはない)ではないのに、広場恐怖が起きる。広場恐怖を起こさない人と比べて、何かの変調があるようである。前頭前野からのトップダウン制御の不全があると、広場恐怖が重症化するのかもしれない。)
- 広場恐怖(2)
(広場恐怖は、心的外傷(パニック障害では、発作経験の恐怖)に対する恐怖条件付けの過剰形成と消去不全があり、それは扁桃体などの下位構造の過剰賦活を、上位構造である前頭前野が十分制御できないとする仮説が提唱されている。PTSDやパニック障害の治療法として認知行動療法としての曝露療法があるが、あえて、心的外傷体験を想起させたり、回避している事物に曝露させることを繰り返すことで、治る患者がいることで、上記の仮説は妥当なように思われる。前頭前野の制御が不十分で、扁桃体の興奮を制御することが十分できずに、不安・恐怖が起きやすいのが、広場恐怖のメカ二ズムのようである。扁桃体の興奮は、広場恐怖のみならず、パニック発作の発現にも関係しているようである。)