比企理恵さんのパニック障害

 =比企理恵さんのパニック障害=芸能人の「うつ病」(2)
 4月28日(2006)、8チャンネル、フジテレビで、実録、「芸能人の心の病」が放映された。
 安西マリアさんのうつ病、比企理恵さんのパニック障害の体験が紹介されました。次に、比企理恵さんさんの場合を、みてみます。

不安過敏に

 比企さんは、13歳で、ホリプロからデビュー、  18歳の時、多忙な中で、ある日、腹部に強烈な痛みがおそった。痛みがひどくなり、ついに、病院へ。子宮頚がんだと言われた。「死ぬ」という恐怖、子供もうめない不安、考えが渦巻いた。3カ月後、がんがなくなったといわれた。理由がわからなう、再発、死への不安におびえた。後に、パニック障害を起こす下地となった。

パニック障害

 仕事を続けていると、28歳の、ある時、激しい心臓の動悸におそわれた。それが頻発するようになった。どこでも起きた。電車、バスが怖いと、どこにもいけない。毎夜、寝ていても起きるので、夜がこわいとなった。病院にいって、パニック障害と診断された。
 睡眠薬をもらうが、眠れない。「薬がきかない」とひどくなった。ちょっとした疑問がわくと、とらわれて騒ぐという妄想がひどくなる。舞台だけは、必死にこなすが、舞台が終わると、大騒ぎして振舞う。ついに、自殺することを考えるようになった。(うつに陥ったのである=大田注)
 毎日、死ぬことを考えた。「もう、本当に苦しかったです。」

パニック障害からの脱出

 脱出できたのは、ある日、知り合いの人に相談したら「気分転換だと思って、神社にでもお参りしてみたら」といわれた。こんな重症が、神社参りで治るはずがない、と半信半疑で神社にお参りしたのが、きっかけ。神社に行くと、すがすがしい感じがした。深く呼吸すると爽快な気分になった。その夜、はじめて、薬なくても、眠ることができた。
 比企さんは「自分にとっての癒しをみつけるといいですね」という。その後、神社めぐりを始めて、ひとつめぐるごとに、パニック障害は軽くなっていった。7年の歳月をかけて、克服した。

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 これが、比企さんのパニック障害になった経過と、治った経緯である。不安過敏になっている日常が下地になって、過労気味の仕事が契機となって、パニック発作が起こった。発作がひどくなると、発作が外で起きるのをおそれて外出できなくなるから、仕事や学校(学生の場合)にいけなくなる。ここで「パニック障害」となる。発作と仕事学業のさまたげ、将来への絶望から、うつ病を併発する。薬物療法では治らないことが多くて、自殺する人もいる。2、3割は、ひどい状態が続くし、4、5割は、症状が残って、完治しない。
 認知療法で治る人もいるが、私どもの心理療法でも治る人がいる。比企さんが深呼吸したというが、ゆっくりした呼吸をたくさん行ってもらうのが私どもの技法である。これを行いながら、不安という感情の対処法を身につけて、不安過敏性、予期不安への意識を改善してもらう。
 パニック障害が薬物療法では治りにくいために、その苦悩が深刻であるため、統計データでは、4割から9割(研究者によって異なる)が、パニック障害に「うつ病」を伴う。意欲の喪失、希死念慮、自殺念慮が起きる。この時には、自殺を決行されないようにしないと、あぶない。
 パニック障害は、発作をおそれる不安が扁桃体を興奮させ、自律神経やPAG(中脳水道周辺灰白質)を亢進させることによるのが多いので、予期不安の思考・感情興奮から自律神経の異常亢進へのひきがねにならないようにすることで、治していく。当初の2カ月は、2週間に1回、あとは、月1回程度、カウンセリングしてもらえば、ほぼ半年で軽快し、あとは、自宅で呼吸法などを1年から1年半行っていれば、ほぼ完治するだろう。不安をしずめる呼吸法や機能分析(精神作用の全貌を知り、何につけて過剰な反応をしなくなる洞察を常に実行)を会得して、予期不安と広場恐怖のからくりから抜け出ていく。
 呼吸法や運運動を通して不快な身体反応を受容する練習をして、すべての生活現場での自己洞察を向上させるカウンセリング技法であるが、アメリカでは、マインドフルネス&アクセプタンスのセラピー(心理療法)と呼ばれて、かなり普及している。だが、日本では、まだ行うカウンセラーがいなくて、パニック障害に長く苦しむ人が多い。これは、心理療法を重視しない、日本の医療制度のひずみによる社会問題である。どれだけ多くの人が、学業や仕事を奪われて、貴重な生命を失っていることか。比企さんも、薬物療法では治らず、神社めぐりという行動活性化、心が洗われる環境、深呼吸など、薬物療法以外のことが、効果を発揮した。心理的な支援、心理的なこころの切り替え、呼吸法によるこころの安定などが効いたと思われる。

 山口美江さんの場合は、心の病気にはならなかったのに、週刊誌などが、心の病気にしたてて、うそを書かれたとのこと。ご自分では、心の病気になったことはなかった、という。