パニック障害の人は扁桃体・海馬が興奮しやすい
パニック障害の人は予期不安や勘違い(単純な身体症状を発作の前触れだと勘違い、等)による不
安を起こしやすいことが観察される。
パニック発作を経験した人のすべてが、予期不安、広場恐怖に発展するわけではない。それに発展
する人には、何かの機能亢進か低活性化が起きている可能性がある。予期不安や勘違い不安は、認知
(思考)、情動が関連しているのだが、前頭前野の低活性化が起きているようである。前頭前野の制
御機能が十分ではないために、予期不安の思考、不安の感情が起きやすい。これが予期不安である。
予期不安の中で、思考、感情の興奮を抑制できずに、自律神経(交感神
経)を異常に亢進させて、責任部位を興奮させて発作が起きてしまうと推測される。
不安が起きやすいのは、パニック障害の人は扁桃体・海馬が興奮しやすいことが観察される。「Clinical Neuroscience」(特集「側頭葉」)によれば、扁桃体や海馬における機能の変
化がみられることが報告されている。(PD=パニック障害)
「これまでのMRI研究では、PDの側頭葉、特に扁桃体や海馬領域での異常が指摘されている。」(581
頁)
「PDのPET研究は、1984年、Remanらによって始まった。彼らは安静時の脳血流を測定し、乳酸ナト
リウムでPDが出現したPD患者では右側海馬傍回の血流が増加していることを示した。その彼らは同様
の研究を繰り返したが、結果はほぼ同じであった。また、他の研究者からも海馬の機能異常が指摘さ
れている。」(581頁)
「最近、van den Heuvelら(2005)は、PD群、強迫性障害群、心気症群、そして正常群の4群を対象
に、PDに関連した不快な言葉(例えば、心臓発作、混雑、気絶等)によって、PD群のみで扁桃体や海
馬が活性化すること、つまり疾患特異的であることを初めて示した。以上より、fMRI研究の結果から
、PD群患者では不安恐怖刺激が扁桃体や海馬領域をより強く賦活させることがわかっている。」
(582頁)
パニック障害の人の扁桃体や海馬領域は、興奮しやすくなっていて、他の不安障害と同様ではない
。こういう特徴は、心理療法にも考慮されると、治療効果を高めるであろう。
認知療法でも、言葉や身体反応を発作にむすびつけないように指導されるが、認知の修正方略だけ
で成功しない患者もいる。その点、注意集中、連合解消、徹底受容などの実践的カウンセリング手法
のある自己洞察瞑想療法(マインドフルネス心理療法)は効果があがりやすいと思われる。
マインドフルネス心理療法の技法では、感覚、身体反応などを、そのままで受容して、言葉・判断・思
考に連合させない訓練を継続してもらう。これによって、不快な刺激があっても、呼吸や目前の見ることに、注意を向ける(分配性注意)ことができるようになり、
自信が強くなって、不快な刺激を受容できるようになり、予期不安、勘違い不安
が減少していく。
こうして、広場恐怖への改善に、突入できるようになる。不安がありながらも、注意を目前のことに強く向けて、一つづつ、広場恐怖が解消されていく。
(注)
- (参考)「Clinical Neuroscience」(月刊 臨床神経科学)、中外医学社、2006,Vol.24 No.5(
特集「側頭葉」)、「パニック障害と側頭葉」新潟大学、北村秀明氏、塩入俊樹氏。