高木美保さん・パニック障害/うつをのりこえる(2)
9月1日(2006)、TBSテレビで、高木美保さんのパニック障害、うつ病のことが詳細に紹介されました。高木さんのNHKでの放送内容を、次の記事でご紹介しました。
高木さんは、パニック障害もうつ病も薬では治らなかったのでした。
「でもある日、気づいたんです。「わたしは女優に向いていない」と。「向いていないんだったら、体も疲れていることだし、やめてみよう」と。
何がきっかけで、こういうふうに、考えを変えることができたのか、これまで私には明確ではなかったのですが、今回の放送で、仕事で行った奥入瀬渓谷の自然にふれたことがきっかけだったそうです。医者でもない、カウンセラーの助言でもない。自然にふれた時に、気持ちが変わりはじめたのだそうです。今回、こんなふうに、語っておられました。
「もういいんじゃない?って言っている気がしたのね。人に嫌われることをおそれていたり、有名でなくなることをおそれたり、貧乏になることを恐れたり、
そのために命をすり減らすか、ゼロになっても生きてもう1回やりなおすか、
もういいんじゃないって言ってくれる人間の友達はいなかったのね。
でも自然は言ってくれたような気がしたの。
はじめて勇気がなくて決断できなかった女優をやめるっていうことが決断できたんです。」
こうして、8年前から、栃木県那須にいなか暮らしを始めた。
苦しんでいた人が、大自然にふれて苦悩を克服したきっかけになったのを小説で描いたので、思い出すのは、2つあります。記憶で書きますので、少し違うかもしれませんが。
- 川端康成の「千羽鶴」
好きな人がいたのに事故のような形で他の男に傷つけられた文子が死に場所をさがすようなふうで阿蘇近辺を歩きまわる。飯田高原の中で、回心が起きた。死ぬことをやめて、新しく生きようという気になった。
- 志賀直哉「暗夜行路」
時任健作は、妻が他の男から犯されたのを苦しんだ。妻が悪いのではないと理性では許そうとするが、情が、ゆるさなかった。夫婦間が冷えて、長く苦しんだ。ある時、鳥取の大山に登った。その大自然にふれた時、自分の心の小さいことを悟った。そして、妻を許すことができた。
おおよそ、こういう内容だったと思うが、自然にふれたことで、深い苦しみが解決するのだろうかと、小説だから、おちをつけるのかと、一抹の疑念をもっていた。だが、高木さんの克服のきっかけが、奥入瀬の自然に触れたからだと聞いたので、実際、そういうことがあるのだと感動した。この2つは、やはり、名作なのですね。私は、こういう作品の舞台や作者のゆかりの土地を歩くのが好きです。十数人の好きな作家がいて、そこをたずねていきます。この2つの場所は、まだ、行っていないので、いつか行ってみたいです。
薬よりも確かなものが自然にあった。明るくなったら起きて、しっかりと体を動かし、暗くなったら眠る。そういう自然らしい生活も、パニック障害やうつ病を治します。あまりに、自然から離れた暮らしをすると、心を病みます。高木さんの明るさは、自然の中で、生活なさるからですね。
高木さんは、自然から教えられたが、認知療法などのカウンセラーも、同様の助言をしてくれます。こういう心の病気、特に、パニック障害について勉強していない家族や友達は、助言できないのも無理はありません。ぜひ、カウンセラーを訪問なさることをおすすめします。