パニック障害に認知行動療法/薬物療法

 「パニック障害」最新医学社、2006/8(5,250円)が出版された。日本におけるパニック障害の最新状況の紹介ともいうべき内容である。(専門家向けのものであり、患者向けの本ではない)
 この本の中で、千葉大大学院の清水栄司教授が最近の治療についてまとめている。パニック障害の治療法として、セロトニンに関係する薬(SSRIなど)による薬物療法と認知行動療法(CBT)が基本である。日本では、CBTを行う医者は少ないために、まず、薬物療法がはじまる。治らない患者は、CBTを行う病院をさがすので、千葉大精神科では発病してからの平均が6年だという(232頁)。千葉大精神科では、集団CBTを提供している。抗うつ薬との併用でも、抗うつ薬なしで、CBTのみでも効果があるという。

   逆に、Kampmanらは、最初にCBTを行っても、効果がある患者が多く、ただ、CBTではうまく反応しなかった患者に、SSRIを併用したところ改善効果があったという(233頁)。
 CBTに反応しない患者は、脳由来神経栄養因子(BDNF)の低下がみられる。これは、うつ病患者にもみられる。清水教授は、「恐怖を忘れやすくさせる」治療薬の開発をめざしている。こうして、パニック障害の治療法が研究されている。

 薬物療法でも、認知行動療法でも完治しないという患者さんが、自己洞察瞑想療法で治ることもある。しかし、自己洞察瞑想療法がきかない患者さんもいる(呼吸法や朝起き、運動などをよく実践できないようである)。そういう場合には、CBTを行なえばよい。種々の療法を選択できるのは患者さんにとっていいことだ。
 心理療法には、認知療法、行動療法がある。行動療法は、論理的な思考などは指導せず、「身体行動」を指導する。認知療法は、論理的な思考により、感情的になることを少なくする療法であり、「思考法」を変える。自己洞察瞑想療法は、その2つと違って、いわば「精神の運動」「精神の反応」のしかたを変えるようなものだ。注意集中法、不要機能抑制法、徹底受容法などがあって、論理的な思考を修正するのではない。
 心理療法のこういう違いが、患者にとって、うまく反応する場合としない場合があるのだろう。種々の療法を提供できるカウンセラーが、うつ病やパニック障害を治すことができるだろう。