パニック障害・最近の研究動向
 =認知療法により感情系の亢進をしずめる

 パニック障害(PD)についての、最近の研究成果をみています。

うつ病患者は、コルチゾール増加

 うつ病患者は、ストレスホルモンであるコルチゾール(グルココルチコイド)が増加している。心理的ストレスを受けて、不快な思考(不満的、否定的、悲観的、絶望的、解決不能的など)が起きるので、不快な感情が起きて、コルチゾールが分泌される。これによって、サイトカインを産生して、脳内に入り、前頭前野などを失調させ、うつ病の精神症状が起きると推測される。  HPA系、コルチゾール、サイトカインについては、次の記事で触れた。

パニック障害患者でコルチゾールは?

 では、パニック障害の患者は、どうなのかという点であるが、まず、安静時(発作が起きていない時の日常)では、コルチゾールは、パニック障害の患者の一部、広場恐怖を伴う患者の一部のみ多くなっている。(NCは健常者である)  パニック障害が長引かないうちは、コルチゾールは健常者なみである。パニック障害が長引いていると、うつ症状も併発するが、そのような患者は、コルチゾールが高いであろう(推測)。
 次に、発作(PA)が起きている時の、コルチゾールは、上昇していない場合と、上昇している場合が報告されている。「実験環境下で生じた自発性PAにはコルチゾールの増加を伴わないと報告」(3)される。さらに自然環境下で生じた自発性PAでは、コルチゾールが増加するという報告もある。

認知的介入

 認知的な助言をすると、PD患者でも、健常者(NC)でもコルチゾールを減少させる。  認知的介入(心理療法の一つの技法)は、コルチゾールを減少させるから、うつ病の治療には、効果があるわけがわかる。
 パニック発作は、コルチゾールが直接、引き起こすものではなさそうだが、自律神経が亢進するとパニック発作は誘発されることがある。認知的介入は、コルチゾールの視点からも、パニック障害に、効果があるだろう。パニック障害の治療には、ほかに、前頭前野の抑制機能が大きな効果を発揮するようである。ここにも、認知的介入や行動療法的技法が効果があるようである。