眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)

 PTSD(外傷後ストレス障害)の治療法に「眼球運動による脱感作と再処理法(EMDR)」がある。

 EMDRとは、Eye Movement Desensitization and Reprocessingの略で「眼球運動による脱感作と再処理」と呼ばれる。 1989年にアメリカでFrancine Shapiroという臨床心理学者が発表した治療法。

 「これまでの治療方法では、起こっ たできごとのすべてをこと細かく語ることが必要とされることが多かった」という「傾聴」型と比べ て、この心理療法は、患者さんが多くを語る必要のない技法と認められているといいます。病理の問題の治療には、傾聴ばかりではなく、積極的に病理を改善するタイプの心理療法が用いられる必要がある事例でしょう。こういうタイプの心理療法は、認知行動療法ですが、日本には、認知行動療法を受けられる場所が少ないのが課題です。

 「EMDRは、外傷的なできごとを考えてもらいながら、治療者が患者さんの眼の前で指を一定の速度で動かし、それを眼で追いかけてもらうといった比較的単純な手続 きを中心とした治療技法です。眼球運動は脳を直接的に刺激し、脳が本来もっている情報処理のプロセスを活性化できるのです。ですから、5年、10年かけて、心のどこかに落ち着いていくプロセスを非常に短時間に進めることができます。そして、その過程は患者さんの脳の本来の力を引き出すので、マインドコントロールのように洗脳される、治療者に操られるというような心配は全くありません。また、止めたいとき にはいつの時点でも止めることができます。また、これまでの治療方法では、起こっ たできごとのすべてをこと細かく語ることが必要とされることが多かったのに比べ て、大変ストレスの少ない技法と認められています。 (日本EMDR学会のホームページより)

 「1990年代にアメリカの心理学者シャピロが開発した方法。恐怖症やPTSDに使用される。目を左右に動かすという動作を繰り返しながら、外傷的なイメージの想起、身体感覚の意識化などを行っていき、外傷性記憶にまつわる強烈な感情を再処理することによって、PTSDの症状を軽減する。」(「心的トラウマの理解とケア」じほう、145P より)