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自殺防止のために(7)=10の共通心理を理解する

7.自殺に共通する認識の状態は、狭窄である。

 「(すべての自殺では非常に焦燥感が高いのは事実だが)自殺を、精神病、神経症、パーソナリティ障害だけからとらえては、十分に理解することはできない。多少なりとも、感情や知的機能が一過性に心理的な「狭窄」( constriction )に陥っているととらえるほうが、より正確に理解できる。狭窄の同義語として、「トンネル化」「焦点化」「狭小化」などがある。この状態に陥ると、いつもなら意識に上るごく普通の選択肢さえ思い浮かばなくなり、極端な二者択一的な思考、すなわち、ある特定のおよそ魔法のように素晴らしい解決策か意識の停止か、全か無か、白か黒かといった考えにとらわれきってしまう。」

<そこで、支援方針>
 「まず、心の目隠しを外し、魔法のような解決策を得るか、死ぬしかないといった、二者択一的な、白か黒かといった思考法を超えて、選択肢の数を増やすことによって、自殺の危険の高い人の思考の狭窄した状態に働きかけてを増やすことによって、自殺の危険の高い人の思考の狭窄した状態に働きかけていくことが重要である。精神療法家が注意を払っておかなければならない危険な単語は「〜しかない「ただ〜だけだ」という単語である。」
 (「シュナイドマンの自殺学」(金剛出版)41頁)
 自殺したくなるのは、うつ病からが多い。うつ病になると、自殺だけではなくて、種々のことでこのような極端な二者択一的な思考に陥る。それで不快な思考、不快な感情を繰り返して、苦しさを深めていく。仕事がうまくいかないで自殺した人がおられるが、自殺以外に、その職を辞めるという選択肢のほか、種々あったはずである。いじめによって自殺する子にも、親に相談するとか、校長室に行って「いじめがつらいから自殺する」と直訴する手段、不登校になる、転校する、種々の選択肢があるのだが、視野が狭窄になって、思いつかない。
 だから、うつ病になったり、自殺したくなったら、誰かに支援を求めて、冷静な頭で対策をとってもらうべきだ。だから、ふだんから、「つらくなったら、みなで冷静に考えよう。決して、そうだんもしないで死ぬようなこよはしないで。」と言っておくべきである。
 相談を受けた、親や教師が、選択肢を提案できなければ、うつ病、自殺の治療に得意なカウンセラーに相談すべきだ。カウンセラーは、極端な二者択一的な思考を修正するような助言をする。認知療法がその手法を中心としている。マインドフルネス心理療法(自己洞察瞑想療法)もそれを助言する。
 自殺しようとする人には、極端な二者択一的な思考があるとすれば、それを修正するような助言をしない医者(薬物療法のみ)は、自殺防止には不適当であることになる。それが心因性うつ病による自殺念慮を持つ人、心理的痛みを抱えた人で自殺しかけている人である。認知の修正法を知らない医者は、重症のうつ病、自殺防止の治療には不適当である。自殺対策基本法による対策がすすめられていくが、二者択一的な思考を修正するノウハウを持つ人が参加しないと、自殺を防止できないだろう。