自殺率を10年後に20%以上削減=閣議決定
政府は平成19年(2007)6月8日の閣議で、自殺対策基本法に基づく「自殺総合対策大綱」を閣議決定した。数値目標を「平成28年までに20%以上減少させる」とした。削減目標は00年の「健康日本21」では約3割としていたが、今回の大綱では、より現実的な取り組みを進めることを重視した。
日本では、06年まで9年連続で自殺者が3万人を超えており、欧米諸国と比べ突出して高水準にある。失業など社会的要因による中高年男性の自殺や、20〜30代に多いインターネットの自殺サイト利用、健康問題や介護・看病疲れが原因になりやすい高齢者、といった世代別の分析を盛り込んだ。
具体策としては、次の対策を掲げた。
- 1)自殺の実態を明らかにする。
- 2)国民一人ひとりの気づきと見守りを促す。
- 3)早期対応の中心的役割を果たす人材を養成する。
- 4)心の健康づくりを進める。
- 5)適切な精神科医療を受けられるようにする。
- 6)社会的な取組で自殺を防ぐ。
- 7)自殺未遂者の再度の自殺を防ぐ。
- 8)遺された人の苦痛を和らげる。
- 9)民間団体との連携を強化する。
目標が、3割から、20%以上と、やや、後退したが、やむをえないだろう。実際に、
自殺予防対策は、たいそう、むつかしいからである。それぞれの分野の人たちに、いかにして、うつ
病などを理解させるかはむつかしい。そして、治療法も難しい。短時間の電話相談、面接相談ではうつ病は治らない。薬物療法だけでも、難治性のうつ病は
治らないが、どのようにして、治すのか、誰ができるのか、という点だけでも、途方にく
れる。
児童生徒がいじめ、学業などで、うつ病になれば、治すことの理解と、カウンセリングの課題を実行することがむつかしいが、どうすれば、理解させられるか、治せるかも、むつかしい課題だ。
介護疲れうつ病、被介護うつ病も多いが、対象となる高齢者に、誰がどう指導するのだろうか。どう発見するのだろうか。そのスキルを持つ人をどう育成するのか。
「先駆的な自殺予防の取り組み」を支援することになるが、その方法が、効果をあげているかどうかをどう評価するのだろうか。私どもも、うつ病やパニック障害の方の支援をしている(注)が、理解してくれる医者、心理学者も少ないのではないか。アメリカで盛んになっているが、日本での理解者、評価できるスキルを持つ人がいるのか。先駆的な活動が、多いだろうが、そういうものは、従来の保守的なリーダーが軽視し、行なわないものだ。先進的な心理療法を受け入れる度量があるのか。
むつかしいことが多いので、目標値が、楽観的ではないのだろう。
(注)うつ病やパニック障害は、薬物療法が一定の効果があるが、心理的ストレスが持続する場合には、治らなかったり、再発することも多い。治らないと、抑うつ気分が深まり、自殺することがある。自殺する人の、6,7割は、うつ病になっていると言われる。