自殺削減目標が「後退」していると民間24団体が政府批判

 政府の自殺総合対策会議が先月末に発表した自殺総合対策大綱の素案について、NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」(東京)など自殺対策に取り組む民間24団体が5月10日、「自殺の削減目標が、これまでより後退している」として、見直しを求める意見書を内閣府に提出した。
 素案の削減目標は「2016年までに自殺率を20%下げる」というもの。約2万4000人になり、厚生労働省が2000年に発表した「健康日本21」での「2010年までに年間の自殺者数を2万2000人以下にする」という目標より多くなる。 (2007年5月10日 読売新聞)
 自殺防止は、むつかしい問題だ。自殺した人の8割は、誰にも相談しなかったという調査結果が最近あきらかになった。  こういう傾向があるとすると、<自殺防止対策>は、相当、むつかしい。
 「自殺したくなるのは、うつ病になっているはずだから、相談機関に相談してください。」といって相談してくれれば、うつ病治療の助言をすることで助かるだろう。そうすると、一つは、学校教育、社会教育で、自殺防止・うつ病対策の教育プログラムの導入が考えるられる。それでも、限界がありそうである。
 うつ病について理解がありそうな人でも、相談しないタイプの人がいる。8割が相談しないというが、なぜなのか、相談しないで自殺する人の心理や背景を分析して、対策を考えていくことになるのだろう。今、うつ病だとわかっても、薬物療法だけでは治らない心因性うつ病が多くて、それを治すには、幅広い領域での、ストレス 軽減(これは、心理的ではなくて、物理的な支援)の支援対策が必要である。心理と物理的な総合的な対策が、まだ、具体的に考えられないので、削減目標が後退していく。自殺未遂者のケアは具体的だが、生き残る割合が1割と低いことがわかったので、削減の絶対値は大きくないことになる。
 学校に、スクールカウンセラーや相談員がいても、相談しない子も多い。相談しないのは、いじめだけではない。相談機関がすぐそばにあることを知っていても、相談しない人がいる。若いころからの生き方の反応パターンも影響しており、むつかしい問題だ。この問題に理解が深く、実績のある関連団体から「こうすれば自殺は防止できるはず」と、具体的に、提案してもらって、それを各地の種々の組織で、試験的に実行するモデルプランを遂行したらどうだろうか(もちろん、実施される地域、組織が協力することが前提となる)。時間はかかるが、具体的な対策を地道に実行に移さないと、目標はかけごえだけに終わりかねない。