精神障害者 数合わせの退院でなく
=厚生労働省の方針に反対(朝日新聞)
朝日新聞の社説(9/05/06)は、次の記事で発表された厚生労働省の方針に反対という。
朝日新聞の社説。
「その一つとして厚労省が提案した「退院支援施設」が患者や支援者を驚かせ、反対の声が上がっている。
厚労省が考える支援施設は、精神科の入院病棟を改装するものだ。定員は20〜60人で、4人1部屋でいい。病院の外での活動も交えながら、地域で暮らすさまざまな習慣や技術を身につけ、いずれは門の外へと引っ越していく。そんな道筋を描いている。
だが、これでは退院が書類の上だけのことになる心配がある。賛成できない。
病棟が改装されて、スタッフは医師や看護師から生活支援員に変わる。患者は「退院」扱いになるが、プライバシーさえ保てない生活で、どれほどふつうの暮らしに近づけるのだろう。
利用は原則2、3年に限るというが、更新の可能性を残しているのも気がかりだ。形を変えた入院になりかねない。隔離が続いたハンセン病のような過ちを、二度と繰り返すことは許されない。 」
朝日新聞が期待するのは、次のようなありかただ。
「まったく違った民間の取り組みがある。北海道の帯広・十勝地域では、この10年あまりで精神科の入院ベッドが970床から540床に減った。
退院を望む患者のために、ある精神科病院が帯広市の住宅街に建てた1棟の賄(まかな)い付き共同住宅が始まりだった。
周辺の五つの病院から16人が個室に移り住んだ。食事がつくれない。電車やバスの乗り方もわからない。そんな人たちを隣人にする周辺の住民は猛反対だったが、計画を進めていた側は押し切った。彼らが暮らす姿を見てもらうことで、偏見は薄らぐと考えたからだ。
医療や福祉の関係者らがチームを組み、緊急の相談先として自宅の電話番号も知らせて患者を見守った。この試みに、やがて北海道庁の補助金がつき、地元からもマンションを建てたり、安く貸したりしてくれる人が現れた。
いまでは15棟以上の共同住宅やグループホームが地域全体に散らばっている。患者は野菜や花を育て、あるいは地元のスーパーなどで働いている。 」
これは、場所が病院の外の一般の住宅に住む方式だ。確かに、予算が許すならば、そちらの方がよい。
「このような取り組みこそ、全国に広がってほしい。厚労省や自治体が優先すべきなのは、住まいを用意し、病気に理解の深いホームヘルパーを育て、地域で患者を受け入れる確かな支援計画づくりではないか。
患者の退院に真剣に取り組んできた帯広・十勝地域では、思わぬ恩恵があった。精神科の外来医療が充実し、新たな患者の早期治療につながったのだ。 」
たしかによい案だ。「病気に理解の深いホームヘルパーを育て」る案を出している。これをどうさがして、どう育てるか。誰が行なうのか。ホームの運営には、全面的に時間を提供できる人も必要である。課題は多い。
この記事を読むかたは、この支援事業に理解を示して、実際にやろうと思い、「育てる」催しに参加してみようと思われる
だろうか。理解だけではなくて、実際に動く住民が数人いれば、実現するだろう。
厚生労働省の方針は、試行だというから、その間、反対の声が多ければ中止になるだろう。