地域の自殺防止活動
自殺未遂者の支援
連続10年、自殺者が3万人以上。こうした中、
NHK総合テレビが7月8日(2008)、「自殺を防ぐ2」を放送した。
自殺未遂者の支援に必要なことは何かという視点から考えるというもの。
東尋坊で自殺しようとする人への徹底的な支援
福井県の東尋坊では、自殺を止めるだけでなく、生活の建て直しや借金の解決など継続的な支援を通して、再び自殺を考えないようなサポートをする全国でも珍しい取り組みが行われている。
一度、自殺未遂を起こした人は再度繰り返しやすいと言われている。うつ病も治らず、うつ病の原因となるストレス要因も軽減されないからである。
元警察官だった
茂幸雄さんの活動から、自殺未遂者の支援に必要なことは、その時だけの口だけの助言ではなく、継続的な支援で、次の3点だという。
- 根本的な原因を取り除く
- 支援機関などへ同行し代弁者となる
=川西千秋さん(精神科医、横浜市立大学准教授、横浜自殺予防研究センター代表)の評価では、自殺しようとしている人はうつ病にかかっていて、解決対策を考えたり、根気よく自治体の窓口などと交渉できるコミュニケーション能力が落ちているから、こういう支援が重要である。
- 身近に相談できる場所を作る
活動が成功しているのは、次のようなところに見られる。
- 茂さんはご本人が「おせっかいやき」といわれる。その場限りの口だけの支援ではなく、長く支援すること。そういう人が、その地域にいること。
- NPOとしては4年間で300万円の赤字だという。アパートを借用して被支援者を泊めていること、代弁同行するための交通費が大きいからかなと(大田が)推測した。結局、支援者のみせの営業利益から赤字を補填するのだろう。だから支援者としては、資金を捻出できる事業を並行運営できること、あるいは、無償で支援できる人が多数、その地域、そのNPOにいることが必要である。
-
商店街の一角に相談所を兼ねておろしもちやを開いている。気軽に訪れることができる場所をと考えて開設した。これは、重要である。
こういう居場所は、自殺未遂者の支援だけではなくて、長引くうつ病、不安障害の人たちにも必要である。3〜6カ月のカウンセリングが続くが、自分で計画的に課題を遂行ができない人も多いので、毎週1回ではなくて、毎日でも通える場所があれば、治癒が早くなる。また、3〜6カ月で軽くなっても、仕事再開までに、仕事に必要な機能のリハビリテーションが必要であり、自分でそういう活動を探すことは難しいので、デイケアサービスを受けられる場所があれば完治が早いと思われる。
- NPOをたちあげ、店長、NPOの事務局長をつとめる川口みさ子さんも相談にのっている。自殺したくなっている人は根本的な原因を解決する(債務についての法的手続き、就労支援、家庭問題など)支援を代弁、同行する必要があり、1回だけではすまないし、支援機関にも同行するので、時間の余裕のある人がスタッフにいること。だから、動ける
スタッフが多いほうがよい。
横浜救急救命センター
横浜救急救命センターでは、自殺未遂で運び込まれた人を身体の傷が治ってもすぐ退院させずに、
ソーシャルワーカーが常駐して、必要な社会的支援を評価する。家族との接触もする。うつ病が治っていないので、継続して
精神科医のケアを行なう。これで、再度実行する人が少なくなるという。
これは、自殺未遂者の継続支援という視点からの自殺防止対策である。
そのほかの領域も重要である。自殺する人は、1度目で既遂に終わる(1度目で死亡する)人が9割というデータもあるから、未遂者以外の対策も、非常に重要であることはいうまでもない。自治体も事業体も、財政は厳しいから、費用を最低限にして効率のよい対策を構築していく必要がある。
- 社会構造的側面
- うつ病の予防治療の側面
- 家族問題の側面
の3つの視点から、地域、事業体、家庭での自殺防止活動のモデルを模索していく必要があるのだろう。うつ病は種々の要因から発症する。明日はわが身。家族がなってからでは地域、事業体に支援活動がなければ苦しむ。3つのどの分野も容易ではない。すべての地域で、自治体、事業体、市民が、相当の決意で、とりくむ必要がある。