報道にみるー苦悩の現場
- 99年に東京都立の病院の部長医師(当時53)が自殺した。地方公務員災害補償基金東京都支部は、29日、民間の労災にあたる公務災害と認定した。
- この医師は97年7月から部長を務めていたが、99年1月から6月までの残業時間が月平均99時間に及び、管理職でありながら、外来や入院患者の診察や手術も担当していた。退職や病欠で医師不足が深刻化し、部長として人材確保に悩み、98年秋には出身大学に「非常な激務です。このままでは小生は病気になってしまいます」と窮状を訴える手紙を送り、後任医師の派遣を要請していた。
- 99年7月に不眠や首の痛みなどを訴え、1か月職場を休んだが、8月に復帰。9月になって、出身大学から医師派遣を断られた翌日、自宅で自殺した。
- 朝日新聞、12/30/2004
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これが新聞によりわかる状況である。労災という側面よりも、うつ病治療、自殺問題の難しさを考える。
医師の自殺も多い。うつ病は薬物療法で7割が治るといっても、「私の夫が」「私の子」が、「私の父」が、治らなければ困るのだ。3割のほうになっては困るのだ。100%治ってほしい。
この医師の自殺の例でも、自殺防止の問題は難しい。この医師も「うつ病」であったことは確実である。不眠や痛みは、うつ病にも伴うことがある。痛みは、セロトニン神経が弱って、痛みを抑制できなくなるからだろう。部長医師だから、自分がうつ病だと自己診断できて、大きな病院だから、うつ病の薬も服用したのであろう。
もし、医師が自分自身のうつ病を自己診断できないのだとしたら、これは、大問題である。医大での教育での再検討、医師免許取得後、何年か後に、医師のうつ病についての教育が必要である。医師不足の時に、うつ病になるほどの誠実な医師をうつ病で休職に追い込み、自殺で失うのは、社会にとって、大きな損失である。
医師の方、自殺しないで下さい!
この例では、うつ病だとはわかっていただろう。うつ病は、薬物療法で治らないケースもある。うつ病だとわかっても、薬物療法だけでは、自殺されるおそれがある。病院におけるうつ病の治療について、薬物療法だけではなくて、病院で精神療法・心理療法を併用する仕組を作って欲しい。精神療法・心理療法は、医師免許がなくてもできる(言葉で助言するだけであるから)。臨床心理士でも、他のカウンセラーでも、うつ病だけを教育されたボランティアでもできる。身体の病気のうち、心身症も多い。心身症は、心理療法を併用すれば、早期治癒につながり、医師の激務を緩和にもなるし、患者や自治体の健康保険の医療費の減少にも貢献する。
「お医者さんに効く! ストレス解消ハンドブック」(発行:じほう、監訳牛島定信、著者は、イギリスの心理学士)などを参考にして、医師は、自分や病院での労働環境を見直し、自殺することのないようにしていただきたい。
医師は心理的な側面を軽視するような偏見を捨てて、もっと、心理的なサポートを考慮すべきである。どの人も、かけがえのないいのちだが、それを救う医師の自殺は特に防ぎたい。うつ病は薬物療法で治るという原則論だけではなくて、薬物療法だけではないうつ病治療体制を社会全体で、検討してほしい。