4月19日(2005年)午前9時半ごろ、埼玉県の小学校で、4年生担任の男性教諭(22)が校舎3階の図工室で自殺した。
- 教諭は3月に大学を卒業し、4月1日に同小に着任した。担任クラスは特に問題を抱えておらず、同僚も教諭が悩んでいる様子に気づかなかったという。
同校の関係者は「(教諭は)はきはきとした好青年で変わった様子もなく動機は思い当たらない」「教諭は児童たちにも人気があった。思い当たる節はない。」と話している。
- 19日午後の5時限目はクラスの授業参観だった。
- 着任してから、わずかに19日であるから、抑うつのある「適応障害」(期間がもう少し経過すれば「うつ病」)であったかもしれない。テレビによれば、この先生は、参観日をひかえて、「緊張する」「大変だ」と何度も語っていたという。職場の同僚や校長には、問題ないように見えても、急速に、「うつ状態」になった可能性がある。
自分のためにも、部下のためにも、家族のためにも・・・、
すべての人が、管理職が、自殺防止・うつ病予防のカウンセリング・マインドをもっておくべきなのだ。
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日本社会臨床学会運営委員の小沢牧子氏に「「心の専門家」はいらない」(洋泉社)という著書があるが、うつ病や自殺の心理は、予防が大切で、専門家の問題ではなくて、すべての人が、ふだんから心得ておくべきことである。教師や各組織の管理者が周囲の人の心理をよく理解していれば、うつ病を防止できることもある。発病したら、早く治すことが重要である。だから、遠くの専門家よりも、町内の住民や保健所職員、教職員、各組織の管理者など、どこの地区にもいる住民が中心となって活動すべきであるという意見も検討すべきである。そして、他者や専門家に依存せず、すべての人が、カウンセリング・マインドを会得すれば、自分の発病の予防や、他者をいじめたり、害することが減少するだろう。
- 学校の先生は、対人関係を築かなければならない関係者(クラスの生徒、同僚の先生、PTAなど)が多い。だから、対人関係の苦労が多い上に、過重労働の傾向がある。休日も解放される気分になれない。教師は、ストレスが大きい職業である。自分が、心の病気にならないようにふだんからカウンセリング・マインドを会得しておくべきであろう。
一方、先生が、児童生徒を心の病気においこむこともある。不登校だった生徒へのアンケート調査によれば、児童生徒が不登校になるきっかけを先生がつくることも多い。
先生が、児童生徒を不登校に追い込む場合には、先生が児童生徒の気持ち、苦しみの心理を共感できないことが大きいであろう。児童生徒が不登校になった場合、学校カウンセラーは、教師の問題を改善せずに、児童生徒側だけをカウンセリングして登校させることで済ませ、児童生徒の管理に使われる危険性があることを、小沢牧子氏が危惧している。教師の言動に傷つけられて不登校になった児童生徒は、学校カウンセラーには、その事実を言い難いだろう。
教師は、加害者側にならないためにも、うつ病に追い込む心理、カウンセリング・マインドを会得しておくべきなのであろう。
- 児童生徒のうつ病、不登校、自殺を予防するためにも、教師のうつ病、休職、自殺を予防するためにも、教師全員が、カウンセリング・マインドを会得するのがよいのだろう。専門家ではないが、教師が心のカウンセリング・マインドを持つ。うつ病、自殺防止の心得は、心理士などの「専門家」だけが知っていればよいというものではない。義務教育、高等教育、社会教育などで、啓蒙すべきである。だが、すべての人が、他者のカウンセリングまで「会得」することは実際上、無理であるから、「浅くすべての人」に、「しっかり治せるように専門家に徹底的に」、この両方を推進すべきであろう。今は、うつ病を(認知行動療法や対人関係療法で)治せるカウンセラーが少ない。どちらか一つのみを重視するのは、偏見である。薬物療法のみ推進するのも偏見である。薬物療法と心理療法の両方を研究、推進すべきである。