「宗教または神の問題」に関する精神疾患

 アメリカ精神医学会の「精神疾患の分類と診断の手引」(DSM-IV-TR)によれば、

17 臨床的関与の対象となることのある他の状態」のV62.89 宗教または神の問題」

 に該当する精神疾患である。

 「このカテゴリーは、臨床的関与の対象が、宗教または神に関する問題である場合に用いることができる。その例としては、必ずしも教会組織または宗教団体に関連しないで、信仰を失うことまたは信仰に対する疑問、新しい信仰への転換に付随する問題、または神の価値に対する疑問、などと関連した苦痛な体験があげられる。」(1)

 

 カルト宗教に関与したために不安を覚えるとか、教団から脱会する不安を覚える場合、思い込みから神仏などのたたりをおそれる場合、さらに、教団からの強い圧迫はないにもかかわらず、教団へ行くこと、儀式に参加したり行うことの強迫観念があって自分や周囲に苦痛を与えている場合などが、カウンセリングの対象となる。


 自己洞察瞑想療法は、認知行動療法の一種であるから、宗教、絶対者についての偏見、独特の思想観念などについては明確な態度(人を苦悩させる観念は修正できる)をもっているので、このような問題のカウンセリングには、特に貢献できる。不安は得たいの知れないものではないし、心の病気もわけがわからないものが起こしているのでもない。元来、思考(思想・固定観念から起きる)、感情、情動性自律反応などの生理学や脳神経科学の成果をよく知らないために、不安・恐怖を強めていることを知らない人が多い。


 その宗教的固定観念の修正をはかる(新しい思想、観念に変化させるのではなくて、不安などの感情の知識を学び、社会生活に支障ないほどに回復させ、自立できた時点で修了する)のが目標である。固定観念が修正されれば、不安は軽減し、衝動、行為の異常はおさまる。または、不安などへの洞察力が向上し、コントロール法を会得できれば、問題行動は治る。


 カウンセリングの手法は、呼吸法、不安・恐怖の観察、宗教的観念を本音として再構成、価値実現の「反応の習得などにより、思想・思考の不確かさを観察すること、不安・恐怖・身体反応の起きる様を観察して、背後の宗教的本音の偏見性を正確に知ることと、不安や強迫行為をもたらす本音(宗教的観念について質疑応答により修正することが中心となる。

 

(注)