子どもの自殺防止のために

 子どもの自殺がある。親の支援があっても、薬物療法を受けていても、自殺することがある。子どものうつ病について、一歩ふみ込んだ教育が必要であると思う。
 深刻に考える傾向のある人は、ストレスのかかる出来事や悩みごとがあると、うつ病になり、自殺することがある。うつ病の発症には、遺伝的な素因、環境、性格、心理的ストレス、ストレス対処法など複合した要因が関係しているようである。心理的ストレスは、ライフ・イベント(短期に集中して悩みごとが押し寄せる出来事)と日常いらだちごと(大きな出来事ではないが、長期間悩みが継続)がある。
 子どもは、いじめ、学業不振、何かの失敗・事件、家庭の不和、家族の不幸、家族の厳しい対応、健康問題、失恋などで悩むだろう。重篤な病気にかかることも、以後、不安過敏になる傾向がある。悩みがちな傾向のある子は、かねてから、その傾向を修正しておければしたほうがいいのだが。
 親に相談していても自殺することがある。「死にたい」という言葉をいう場合もある。そういう場合、うつ病になっていたのだろう。ストレスが持続するケース(いじめ、学業不安等が持続)では、薬物療法だけ では効果がうすいだろう。ストレスが持続しているから、薬物の効果が及ばない可能性が高い。 「大丈夫」と言っても、本人が、うつ病の症状としての自殺念慮を知らない場合、それでも自殺のリスクがあるだろう。自殺念慮は、瞬間瞬間、変わるからである。1時間前に「大丈夫」と思っていても、1時間後に、また、ストレスが加わると、自殺念慮が強まるかもしれない。うつ病ならば、治らない限り、自殺のリスクは消えていない。
 死にたくなるのは、うつ病の症状であって、治療すれば、治るということがわかっていれば、自殺は実行しないかもしれない。子どもに、うつ病について、充分な教育をする必要がある。そのことを保護者も深く勉強して、子どもが悩む時に、つっこんで聴いて助言する必要があるのだろう。子どもに学校でうつ病、自殺について授業をしていても、まだ、不十分である。保護者、教師が、よく、理解しておいて、うつ病らしい子には、つっこんだ会話をして、希死念慮、自殺念慮を確認して、特別の配慮をしないといけない。うつ病になったら、本人は、授業を受けていても、それを思い出せない可能性がある。うつ病になると、記憶、判断力が変わるからである。衝動の抑制もできなくなるからである。
 また、学校や地域のカウンセラーの支援を求めたほうがよい。不安傾向の強い子は、かねてから、不安過敏性、悲観的思考傾向を改善する心のトレーニング、ストレス対処法の習得をしておくのがいいと思う。スポーツで身体を鍛えることは、よく知られているが、心が弱いと思われる子は、心の鍛錬をしておくのがいい。ストレス対処法の訓練である。( 0702-021 )