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子どもの治療はむつかしい

抑うつ状態の小学生は自殺考える傾向が4倍

 =宮崎大教育文化学部の臨床心理士・佐藤寛さんら
 =6月29日から札幌市で開かれる日本うつ病学会総会で発表

 小学4〜6年生の1割以上が抑うつ傾向にあり、自殺を考えるリスクは抑うつのない子に比べて4倍高い。

 佐藤さんらは05年7月、茨城県内の小学4〜6年生669人を対象にアンケートを実施。その3か月後、6カ月後も実施。
 その結果、  その傾向の継続性については  抑うつの原因は、友人関係のストレスの度合いが最も大きかった。ただ、自殺を考える傾向には友人、教師との関係、学業などが複合的に影響していると分析された。---(A)

 警察庁によると、06年の小中高生、大学生らの自殺者数は統計をとり始めた78年以降最多の886人だった。また、子どものうつは見過ごされがちなうえ、一部の抗うつ剤は自殺のおそれが高まるとして18歳未満の服用が禁じられており、治療の難しさが指摘されている。---(B)

 佐藤さんは「親や教師が子どものうつ状態に気づくことが重要。抑うつの引き金は過去3カ月以内の出来事が関係しているとの結果も出ており、まずはその解決を図ることも効果がある」と指摘している。---(C)
(新聞記事から抄録)

子どもにも抑うつが多い

 このホームページにも、小学生、中学生の抑うつ傾向について、別な調査を紹介している。どの調査でも、1,2割の抑うつ傾向があるとされている。今回は、継続して3回行なったことに意義があり、抑うつ傾向が改善しないことがわかる。抑うつ傾向の重いケースは、うつ病という基準に該当するものがある。そうすると、うつ病の症状の「自殺したくなる」という恐ろしい症状がある。子どもにも、そういう自殺念慮が起きている割合が高いことがわかった。この傾向も、どの地域でも大きくは変わらないだろう。
 子どもの抑うつ、うつ病は、治療がむつかしい。子どもに抗うつ薬を服用させると自殺の衝動が強まるというニュースが報道された。子どもに、うつ病が発見されても、すぐ薬物療法を行なっていいかどうか、むつかしい状況にある。

子どもの治療はむつかしい

 子どもに、抑うつ、うつ病が多いとわかっても、治療がむつかしい。
 心理療法によるカウンセリングはどうかというと、これも、普通の方法(その本人とカウンセラーの個別面接)では、むつかしい。次のような特徴があって、心理療法によるカウンセリングでもむつかしい。

親の協力が重要

 こういう特徴があるから、保護者、学校が協力すれば、治療できると思う。
 長期間、見守りながら治療にむすびつけることになるが、見守りがなくなると、自殺されることになる。
 抑うつ状態にある子どもの保護者が心理療法によるカウンセリングを受け付けるだろうか。
 抑うつ、うつ病には、子どもの場合では、週に、1、2回、カウンセリングの実習指導が必要であろう。該当者に、学校で、あるいは、民間のカウンセリング所で、カウンセリングを行なうようなことは、実現しそうもない。親の育て方が悪いと指摘されているような気がして受け入れられない。レッテル貼りのようにとられて、嫌だ。こうして、該当者のみのプログラムは、親が拒否するだろう。

 そこで、子どもの抑うつ傾向、自殺の防止には、とにかく、予防が重要だと思う。保護者も教師も医者(学校医も)も、うつ病におちいらせてしまう問題を分析して、予防対策に真剣にならなければいけないと思う。
 いじめが報告されたら、真剣に解決させることが必要であることがわかる。親や教師がいいかげんな応対をしていると、いじめがやまず、被害者のうつ病が深まって、自殺される。親も教師も、うつ病、自殺について、勉強すべきだ。治療までするのは、専門のカウンセラー、医師でいいが、うつ病の特徴については、よく理解しておくべきだ。
 いじめ以外にも、抑うつにおちいらせる原因がある。社会の支援が必要である場合もあって、むつかしい。子どものうつ病、自殺は、見落としなく対策をとる必要がある。