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研修医の自殺
=研修医のストレス、自殺予防
自殺が連続して9年、3万人以上である。そのなかに、医者が90人、含まれている。毎年、多くの医者が自殺していく。うつ病のせいだろう。
その中には、医師になりたての、研修医の自殺もある。研修医の過酷な勤務や自殺も最近、報道された。
研修医の自殺について考察した記事が「こころの科学」129号( 2006/9 、塚田真紀子氏)にあった。
2004年7月、研修医1年目の24歳の女性医師の自殺を紹介している。実家を離れた病院で研修を受けた。ひとり暮らしのマンション。65日間、休日はゼロ。先輩医師とうまくいかず、実家の母親に泣きながら電話してきたこともあった。7月休みたかったが、先輩医師から研修医は休めない、といわれた。母への電話で「死にたいよお」という。まさか本気とは思わなかった。4日後、自殺した。その朝、実家の母あての、わかれの手紙がとどいた。まにあわなかった。
筑波大学附属病院で、研修医の指導にあたる前野哲博氏の話が紹介されている。要約すると、研修医のかかえるストレスは、3つある。
- 「人間としてのストレス」=研修医の労働時間があまりに長すぎる。
- 「未熟な医師としてのストレス」=未熟なのに責任が重い。患者から拒否される。院内のスタッフから軽く扱われる。
- 「新人社会人としてのストレス」=職場の人間関係、患者と家族との人間関係。
研修医のうつ、自殺は少なくない。医者の世界では、うつ病に理解がない人がいるという。
「医師の世界には、「過酷な研修期間を乗り越えてこそ一人前」という空気がある。」
うつになる研修医は多いのに、しばしば適切な対応をされていない理由を、前野さんは
「「理由は2つあって、一つは医者がメンタルヘルスケアを十分に理解していないことです。(中略)」
「もう一つは「医者は身を削って働くものだ」という考え方です。(中略)
また「精神的にまいるやつは、医者に向いていない」とみる傾向が強い。」
しかし、前野さんはいう。
「うつになる人は、まじめで、几帳面で、成績もよくて、陰日向なく働く人が多い。」
最近は、研修医のメンタルヘルスにまで気を配ることで、優秀な医学生を獲得し、育てていこうとしている。指導医の役割が大きいという。また、研修医のメンタルヘルスにとりくむ病院を紹介している。
「うつになる人は、まじめで、几帳面で、成績もよくて、陰日向なく働く人が多い。」こういう傾向はよく知られている。すぐれた医者になりそうな人たちだ。指導医のメンタルヘルスの理解と、患者をも含めて、病院をあげてのうつ病、自殺防止のとりくみをしてほしい。
医者、病院スタッフのメンタルストレスの緩和のために、アメリカのマサチューセッツ大学医療センターでは、医者、病院スタッフにも、マインドフルネス心理療法のプログラム( SRRP =埼玉メンタル・カウンセリング協会のHPにて紹介)を実行してもらっているという。これも、参考になるだろう。これは、(A)環境改善のほうではなくて、(B)医者、スタッフのストレスへの耐性を向上させるほうの対策である。うつ病、自殺の予防は、両面作戦でいくのがよいのだろう。