障害者自立支援法の成立

=新しい「精神障害ケア・マネージャー」が必要か?

 身体・知的・精神の障害ごとに異なる福祉サービスを一本化するとともに、利用者に原則1割の負担を求めることなどを柱とする障害者自立支援法が10月31日(2005年)の衆院本会議で、自民、公明の与党の賛成多数で可決、成立した。来年4月から順次、実施される。
 来年10月からは、市町村が障害者からサービス利用の申請を受け付け、障害程度区分を個人ごとに判定、サービスの種類や利用頻度を決定する。個人別の支援プログラムも作る。

 この法律の運用は、「精神障害者」の部分は、適用、運用が難しそうな課題がある。運営の中心となる市町村当局も困るような問題もある。
 心の内面にかかわることであるから、重度の程度の判断がむつかしい。偏見や面子から、このサービスを提供するには、プライバシーに特別の配慮をしながら支援しなければならないだろう。うつ病やパニック障害も、重度になれば、精神障害者に分類されていくが、これは、心理療法で、治る可能性も高い。医療施設で治療を受けるように助言するのか、もう治らないとして、この法律のサービスを受けるように助言するのか、誰が判断できるのか。心の病気は、薬物療法中心できたが、それで治らなくても、心理療法で治ることも多い。そんな障害であるのだから、判断するのも難しい。アメリカの新しい心理療法を、ご紹介しているように、心理療法も治せる、治せないという判断がゆれてきた。こういうソフト面の問題がある。
 精神障害者は、再発、自殺のリスクがあるので、それを防止するプログラムが重要である。また、自分の住む市町村内では、どのような法のサービスを受けることができて、それ以外にどうしたらよいか、その個人にあった計画をたて、助言できる人が必要になるだろう。精神障害について知識のある「精神障害ケア・マネージャー」のような新しい役割をはたすことができる人の育成が必要になるかもしれない。そういう準備なしに、制度が始まった。試行錯誤しながら、推進していくしかない。
 誰でも、うつ病になる可能性があり、「精神障害者」になったり、自殺のリスクが誰にでもあるから、新しい仕組みが必要である。自立支援の法律ができたが、従来の薬物療法、カウンセリング技法では不十分であることが明らかになってきた。新法を推進するために、比較的的低いコストで、効果のあるサービスを提供できるしくみ、対策を考えてみたい。