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がん患者と看護師(3)
=看護師が燃え尽きないために
看護師は、苦悩に満ちた患者に接する、ストレスの大きい仕事である。燃え尽き(バーンアウト)が多いという。燃え尽きは、うつ病である。看護師が、うつ病にならないようにしたい。
「「燃え尽きない」がん看護」(医学書院)という本で、その対策を論じている。種々のストレスについて別々に対策が考えられているが、最後の対話から、もうひとつみておきます。
平山さんとの対談で、「燃え尽きないで長い間勤めることのできる人、生き残っていく看護師さんの特徴」はという質問に対して、安達さん(注1)の対談が、さらに続く。
安達
「さっきは一緒に泣いていた自分を「ああ、一緒になって泣けたな。自分はプロのナースだけれども、あそこで泣けたのは、気持ちを共有できたからでそれはうれしかったな」というふうに客観的に思える冷静さが大切です。そこから一歩離れて、「私はあそこで一緒に泣けてうれしかった。でも他にも患者さんはいるんだし・・・」と気持ちを切り換えられることが大事だと思うのですが。」
平山
「カール・メニンジャーという精神療法家が、患者さんと接するためには「関与しながらの観察」がたいせつだということをいっていますが、まさにそれですよね。」
安達さん
「なるほど、そうですね。」
平山
「観察というのは、クールな目で相手を対象化し、客観視することです。関与というのは共感する能力とか、情緒的に支援できる能力です。その両方が必要だということですね。」
(181−2頁)
自己洞察法では、今ここへの集中のスキルを養うことが一つある。一人の患者には、全身をあげて注意を向けて、その次に向かう時は、すっかり捨てる。そうせず、前のことをひきずっていれば、次の人の処置がおろそかになり、ミスも起こす。
関与と観察は、メタ認知、全体図の把握に通じる。「分散注意法」の実習で、その能力向上をはかる。思考、感情、衝動、行動など自分の精神活動を観察しながら、相手に向かって行動していく。観察は、自己にも、他者にも向かう。
自己洞察瞑想法の技法を、次の記事に図で示したが、選択的注意法や分散注意法、動的機能分析法(思考や感情に気づいている)などの訓練が、看護師のスキル向上にも役立つであろう。。
共感する能力とか、情緒的に支援できる能力を発揮するには、感情をよく知り、感情処理法をよく知っておかねばならない。それは、直接的には、自分の感情を知り、感情を処理する方法を知っておくのが役立つだろう。それは、まさに、自己洞察法の重要な目標である。感情のプロセスを洞察するのは「機能分析法」であり、感情などの処理法は、不要機能抑制法、リラクセーション法、連合解消などが関係する。
上記の図で、下に記載した、感覚(相手を見るのを含む)、思考、感情、衝動、行動が動いていく(油断すると、暴走して、自分を見失う)のを、高い位置から、これらを観察しながら、抑制すべきものは抑制し、冷静に判断・行動しようということを常に行う鍛錬をするのも、自己洞察法に含まれる。自分や他者にとって、何がいやであるか、怒り、不安、不満などの感情を観察する「機能分析」も常に実行している訓練も含まれる。
自己洞察瞑想法は、心の病気の治療にも用いるが、すべての職域で、自分の精神作用をよく洞察しつつ、よりよき仕事をこなす、対人関係処理をしていくことに貢献するであろう。もちろん、心の病気の予防、非行犯罪の予防にも貢献するだろう。自分の感情を洞察して、感情の苦しさをまぎらそうとして、病気になるような行動、反社会的な行動を抑制する鍛錬をするから。
- (注1)平山正実氏、東洋英和女学院大学大学院教授。
安達富美子氏、東京歯科大学市川総合病院看護部長。