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がん患者と看護師(6)
=看護師が燃え尽きないために
看護師は、苦悩に満ちた患者に接する、ストレスの大きい仕事である。燃え尽き(バーンアウト)が多いという。燃え尽きは、うつ病である。看護師が、うつ病にならないようにしたい。
「「燃え尽きない」がん看護」(医学書院)という本で、その対策を論じている。種々のストレスについて別々に対策が考えられているが、最後の対話をみています。
平山さんとの対談で、「燃え尽きないで長い間勤めることのできる人、生き残っていく看護師さんの特徴」はという質問に対して、安達さん(注1)の対談が、さらに続く。
「ゆるぎない自分の看護観の確立」について、お話があります。
安達
「看護師自身が「私の仕事はこういうことに意味があるのだ」と自分の看護観を人に伝え得る。だけのものを、きちんともっていることが大事です。」
(少し、とばします。)
「ナース一人ひとりが、自分の仕事に対してプライドを持ち、その意義を認めていれば、それをちゃんと返せるはずなんです。燃えつきる人は、それが弱いのかもしれない。単に「しなければならない」という義務感だけが強い人は、そうなっちゃうかもしれない。」(182−4頁)
医師でもなく、付き添い婦でもなく、栄養士でもなく、看護師の独自性は何かということであるという。これが確立していることが、燃え尽きを防ぐことになる。
次のようなことがある患者との関係を克服していく。事例を列挙しておく。看護師の苦悩は相当なものだ。
- 事例1)末期がんで死の不安・恐怖を攻撃的にぶつけてくる患者
現象=患者のストレス、怒り、恐怖。それはわかるが、看護師にぶつけられるのはストレス、不満、不快、疲労。
対処=患者への共感(もっともつらいのは患者)、受容。看護師仲間同志の休憩室では、はきだしあい、一歩外に出たら、切り換えて、ほほえむ・・。
陰性の感情(怒り、自己否定感、無力感、嫌悪感)を残さない会話、あらわにしない対応が求められる。
- 事例2)予後告知に対して怒りをぶつけてきた家族
- 事例3)もうすることはすべてした、死なせて欲しいと依頼する人
- 事例4)軽減しない疼痛から看護師に対して攻撃的言動をする患者
- 事例5)患者に自殺された看護師・医療職
- 事例6)せん妄になった患者の行動に対応する看護師のストレス
- 事例7)看護師を小間使いのように使いたがる人
- 事例8)IVH装着患者の廊下での転倒事故
- 事例9)独特の価値観でわがままな主張をする人
- 事例10)忙しさで優しい微笑をあげる元気もなくなったという看護師
- 事例11)死を意識して死に至るまでの過程を見守る看護師の苦悩
- 事例12)看護した患者が次々と亡くなっていくのに耐えられなくなったという看護師
- 事例13)セデーションすべきか否か思い悩む看護師
- 事例14)医療側と患者の連携がうまく取れず症状コントロールがうまくゆかないケース
- 事例15)家族と患者の和解の機会を持たせられなかった後悔
- 事例16)残される家族の対応に悩む
- (注1)平山正実氏、東洋英和女学院大学大学院教授。
安達富美子氏、東京歯科大学市川総合病院看護部長。