リストカット・ネット心中

「「死ぬ自由」という名の救い 〜ネット心中と精神科医」

 種々のつらいことから、リストカット、ネット心中する青少年(特に女性に多い)がいる。その、実情と治し方について書かれた本が出版された。著者、今一生さん、出版社、河出書房新社。 (  )は、頁。
 治すには、運動がよいという。

自傷行為とは

 つらいことがあって行うリストカットはやがては、自殺に発展することもある。繰り返される自傷行為はどういうことがあるか。

なぜ

 なぜ、するのか、どうして、そうするようになるのか。

見放す親、恋人

治すには

 こういうことは、医者の薬では治らない。治すには、親も真正面からとりくめということ。親と伴走するにしろ、自分一人で、克服するにしろ、「からだを動かす」ことがいい、という。  具体的な方法として、ジムに通う、足裏マッサージ、スーパー銭湯、指圧、バッティングセンター、カラオケ、ラジオ体操、ヨガ(183−4)、空手(209)、文章・絵・音楽などで作品に表現(142)、水泳、花や野菜の栽培(207)、などが紹介されている。  こういうことを自分一人でできないなら、教えてくれるところに通えばいい。あたらしい人間関係を築くこともできる。

行動活性化療法に通じる

 これは実際体験による解決を紹介した本である。カラダを動かすことで、苦悩から脱出していくことを心理療法として確立したのは、アメリカで開発された、うつ病についての「行動活性化療法」である。  うつ病には、好きな行動をするというのが効果があるので、私どもも、自己洞察瞑想法のほかに、こうした「好きなことを何でもする」ということを日課とするということをカウンセリング技法の一つとして助言している。こういうことが、苦悩の軽減に効果があることは、脳の生理学(セロトニン神経や前頭前野など)からもうらづけがとれそうである。
 こういうことが、うつ病ばかりではなく、自傷行為にも効果があるようだ。好きなことをするということが「リストカット、その他の自傷行為」の解決に効果があがっているというのが、今さんの証言である。

日本の社会問題解決へのヒント?

 こういうことを教訓として、地域ぐるみで、うつ病の軽減、自殺防止、リストカット、過食症、依存症などの支援対策をとっていくことができないだろうか。すなわち、こういうことで悩む人を支援するセンターを県に一つ作る。そこでは、地域のNPOやスポーツ、文化系の趣味の会の人が、入れ替わり、立ち代り、体験指導してくれる。NPO、趣味の団体が数多くあるが、そういう団体が、入れ替わり、説明、実演する。そうした中から、悩む人は、一つか、2つ、「私も、それなら、やってみようかな」というものがみつかるかもしれない。また、そういう参加型ばかりではなく、演奏、芸能などを鑑賞する機会もおりこめば、クライアントが感動することもあるだろう。
 こういうことは、市単位という小さいところでは、うまくいきそうもない。狭い地域では、プライバシーを気にして集まらない。参加数が少ないからだ。10人前後のクライアントに対して、100の団体に支援をお願いするわけにはいかない。団体も、動かない。 県単位になると、遠くの会場となり、近所の人たちの目、プライバシーを気にしなくて、百人、2百人のクライアント、悩む人、家族が集まるかもしれない。そこに、県内のNPO,趣味・スポーツの団体の支援をお願いすればいい。これを行って、効果を追跡調査して、効果が確認されれば、立派な、臨床心理学になるだろう。アメリカでは、行動活性化療法として確立された。日本でも、多くのクライアントに接する大学の心理学者や精神科研究者がやってくれないだろうか。