育児うつ病で無理心中

 2月5日、東京都品川区の小学校教諭(30)方で、妻(28)、長男(生後4カ月)、妻の母(59)が死亡しているのが発見され。警察は、妻が2人を殺害した後、自殺したとみている。妻は育児ノイローゼに悩み、薬を服用していたという。妻の母はこの日、実家から訪ねていた。
 実に痛ましい事件です。出産直後と育児の数年間に、母親がうつ病になることが多い。「育児ノイローゼ」と俗称されるが、育児にまつわる悩みからの「うつ病」である。これも非常に多くて、悲劇が繰り返されている。育児うつ病は、うつ病のうちでも、特別の助言が有効な領域であるから、薬物療法だけでは不十分である。精神科医やカウンセラーが特化してほしいうつ病である。薬を飲んでも、日々、育児ストレスがおしよせている。治るまでは、自殺の危険がある。薬物療法だけで、治る保証はない。
 忙しい医師、忙しいカウンセラーだけでは、充分なケアができない育児うつ病には、育児にまつわる悩みを推測して、助言、支援する体制を、医師、看護師、スタッフ、うつ病のカウンセラー、育児支援のNPOなどの連携体制を作っておく。医者は、育児うつ病の女性が受診したら、薬を処方すると同時に、こういうネットワークにつなげる。そういう育児うつ病の専門医、ネットワークが、県に、数箇所あればいい。精神科医が「遺族外来」を専門化したが、「育児うつ病外来」もあっていい。特別のスキルが必要とされるので、薬物療法だけでは不十分だから、育児うつ病に詳しい医者、それを支援するスタッフが必要である。ネットワークの形成にどこが、動けば、いいのか。女性の福祉を担当する自治体、NPO統括団体などに期待できるか。
 そういうネットワークがないところでは、育児に悩んだり、薬を処方されたら、家族は、医者ばかりにまかせるのではなくて、育児支援のNPO、カウンセラーをさがして助言を受けることを考えてほしい。うつ病にまでなると、祖母の経験だけでは不足するであろう。 ( 2007年、0702-011 )