母親を襲う”うつ”
=女性のうつ病・NHKテレビより(2)
「女性のうつ病」を、詳しく、放映しました。
女性のうつ病について、予防や治癒のためにヒントとなることがありましたので、いくつか、コメントいたします。
今回は、治療を開始しても、自殺のリスクは、解消していないということである。
産後うつ病
34歳の女性、初産。出産の後、しばらくしてうつ病に。赤ちゃんの育て方について、
種々、悩んだため。
ここでは、希死念慮、自殺念についての教訓を得ることにします。
- こんなにつらいのは、あなた(赤ちゃん)のせいだ、という思いまで、浮かんだ。
医者に、育児の不安と体調不良を相談すると、あかちゃんを乳児院に預けて、ゆっくり休むように助言
された。うつ病の治療が始まった。
- これは、むつかしい育児の問題からしばらく離れることになって、よかったが、この人の、この直
後の心理、うつ病の自殺念慮について、よく理解しておきたい。
この人は、あかちゃんを乳児院に預けて2日目に、自殺したくなった。その時は、思いとどまったが
。
その時は、自殺を思いとどまったが、その後も、負担はなくなっているのに、朝起きるとすぐに「死
にたい」という思いが出てきた。
ある時「死にたい」と、大声で叫んだ。夫が、驚いて病院につれていき、強制入院となった。
この人は、1年ほど、抗うつ薬による治療を受けて、なおった。あかちゃんは、順調に育っていて、
「あの時、自殺しなくてよかった」という。
ここでの、教訓は、あかちゃんを預けて、負担が軽くなったのに、なぜ、自殺したくなるか。何度も、希死念慮(漠然と死にたいという思い。まだ、具体的な方法までは考えない)、自殺念慮(実際に、まもなく自殺を決行したいという思い。実行方法まで考える。)が出てきている。
うつ病の患者を持つ家族が油断しないほうがよい教訓がある。
- 1)あかちゃんを預けて、負担は軽くなったが、「私は、母親失格だ」という思いがわいたという
。自己否定の思考は、変わっていない。つまり、ストレス状況は、持続している。
- 2)うつ病の症状(希死念慮、自殺念慮もその一つ)は、すぐには、解消しないので、治療が始ま
っても、自殺のリスクは継続している。症状が軽くなり、希望がみえるまでは、自殺のリスクがある。
教訓は、治療を開始しても、家族は、自殺されないように、気をつける必要があるということだ。入院すれば、病院のスタッフが気をつけるが、入院しないで通院するケースも相当あるから、家族は、自殺されないように、あかちゃんをみち連れの心中うつ病をされないように、支援する必要がある。母親だけが、命をとりとめるという悲劇もある。
むつかしい例も多い
この人は、やがて、ストレス状況は改善されたから、薬物療法で治ったが、ストレス状況が、変わら
ない場合には、薬物療法だけでは、治らないことが多い。
いじめにあって、うつ病になって、休学すると、いじめる相手はいないが、「休んでいる」「治って
も、また、いじめのあるあそこに行くのだ」というストレス状況は持続する。仕事によるうつ病も同様
だ。休んでいる、また、あの仕事の場に復帰しなければならない、というストレスがある。そういうス
トレス状況、うつ病になった環境は、変化しないことが多いので、うつ病が薬物療法だけでは治らない
ことがある。
セクハラにあって、うつ病になって退職しても、うつ病が治らないこともある。もう、その職場に戻
ることはないのに、薬物療法で治らない人もいる。薬が効かない人がいる。なかなか、自然治癒もしな
い。つらい人がいる。
そういうことも理解しておきたい。薬物療法で治って、幸福になった人の裏に、多くのうつ病患者が
、治らないで苦しんでいる。薬物療法でいったん効果があるのは、7−8割。その後、6割が再発。ス
トレス状況が変わらないから、ストレスへの対処法が変わらないからであろう。
(続)
06年1月28日に、NHK教育テレビで放送。
06年2月25日に、再放送。
ここから得られるうつ病の実態についてコメントしています。