女性の”うつ”の相談
=女性のうつ病・NHKテレビより(6)
2月16日、NHK教育テレビで、「女性のうつ Q&A」を放送しました。
女性のうつ病について、周囲の人はどうしたらよいかを中心に、質問、悩みに答えるというものでした。予防や治癒のために、参考にしましょう。
妻と夫
- 事例1
- うつ歴10年。30代の専業主婦。3年前に結婚。結婚前に夫には話していたものの、掃除、洗濯、食事づくりなどうまくできない私にいらついている。うつの知識を夫に理解してもらうには、どうしたらよいか。
- (テレビでの助言)
夫の協力が重要。家事も手伝ってもらう。
- 事例2
- 40代、主婦。家事ができない私に、夫が家事をいっさいやってくれる。また「一緒にがんばろう」と言ってくれる。そんなにきづかってくれる夫をもて、「一刻も早く治さなければ」とプレッシャーになる。
- (テレビでの助言)
支援してくれるのはいいが、うつ病については、夫の理解がたりない。「早く治そう」「がんばろう」と言うから。本当の彼女がみえていない。病気がそうしている部分がある。
夫も一緒に受診してもらってください。医師から助言がある。
なお、妻のうつ病が、夫や恋人による暴力(ドメスティック・バイオレンス)による場合には、一緒に受診するのは難しいだろう。
- 事例3
- 夫からの相談。家事を手伝っても、「私の仕事をとって」と怒る。家事をしなければと焦る妻に、「調子いい時に色々やったらいい」と伝えても、「あんたは私の気持ちが分っていない。できないことがどれだけつらいことか」と言われてしまう。どう接したらいいのか。
- (テレビでの助言)
家事は妻の仕事という考えが強い場合に起きる。役割分担をあまり強く考えないように。
高齢期のうつ病も同様。
- 事例4
- 30代、主婦。夫婦とも、うつ病になっている。
- 夫がうつ病になって、ささえていた妻も、うつ病になった。
- 病院を変えたほうがいいか。
- 最近は「家から逃れたい」と追いつめられている。
しかし、夫を見捨てようとしている自分に、罪悪感、嫌悪感を感じてしまう。夫婦がともに立直る道はないでしょうか。
- (テレビでの助言)
二人での孤立がある。そういう時には、自分がみえなくなる。「外に開かれた関係が大切」。この意味は「妻には妻の世界があり、夫には夫の世界が保たれていた方が(健康という言葉を使っていいかどうかわからないが)健康な夫婦関係が保てると思う。(妻は妻の友人との交流があるような、
どこかに開かれていること。外部との風通しをよくする)
夫婦は、同じ医者にみてもらった方がいいこともある。
- 事例5
- 40代、夫から。
- 家事ができないから、迷惑をかけてすまない。離婚してほしいと、妻からいう。
- (テレビでの助言)
大事なことは決断しない。治ってから考えようと伝えること。
総じて、夫婦関係・役割を見直すということ、「心理的再婚」ということだという。
こういう見直しも、他の事例にも、考え方の変更が求められている。こういう助言には、時間をとるので、カウンセラーを置いていない病院では、そういう助言は行わない。本人だけでは、気がつきにくいので、相談機関やカウンセラーの助言を得るとよい。結局、認知の修正である。簡単には、考え方を変えられない場合や、長引いて、抑うつ症状が改善しないと、認知の変更が難しい。
事例1,4は、薬物療法を受けているのに、長引いている。こういう場合には、薬物療法では効果がないのだから、心理療法など他の療法を試みてほしい。
夫の中には、うつ病のなった妻を大きな目で、ささえることができない人もいるから、長引いていると、不満が嵩じて、病気の妻を責めて、離婚を要求することになる。最初は、理解しているつもり、家事も手伝っているつもり、ささえているつもりでも、妻の否定的解釈、逆説的な受け止め方に、とまどい、ながびいていると、不満の感情がまさるようになるおそれがある。夫が、外部で、ストレスにあっている場合、妻への共感、理解を示すこころのゆとりがなくなって、感情的になりやすい。
不満の感情を抑制、コントロールできなくなってくりと、妻を批判する行為が多くなり、離婚を要求する行為となる。妻の病気は、もっと悪化する。うつ病の発病と維持は、否定、嫌悪、不満などの思考によって起きる陰性の感情を繰り返すからである。病気になってからも、陰性の感情が繰り返されるならば、治りにくい。夫が、感情・情動をコントロールできること、病気の相手でも愛することができる度量の広さ、愛情の深さによって、うつ病の夫婦関係が異なってくる。
他者との人間関係
- 事例6
- 30代、主婦。
- 流産や夫の両親との関係などが原因のストレスで、うつ病と診断された。「3か月で治ります」と言われたが、治っても同じ環境にいれば、再発するのではないかと心配です。
(同居しているのかどうか、不明)
- (テレビでの助言)
姑の経験は、今の時代は役に立たないこともある。
このケースは、夫の両親との関係にストレスを感じているので、環境を変えることが必要である。
- 事例7
- 40代、遠くに住む母からの相談。
- 娘がうつ病に。遠くに住んでいる。一人くらしでいるが、何かしてあげられることはないか。
- (テレビでの助言)
母が上京して、面倒をみていいかどうかはわからない。母に反抗的になるかもしれない。うつの状態をよく調べてもらう。学校の相談室でも相談する。
いったん、実家にかえって、ゆっくり休むことがよい。
- 事例8
- 30代、医師との関係の相談。
- 医師と信頼関係が結べず、会うたびに「私が悪かったんだろうか?」「私の言い方、態度が良くないんだろうか?」と考え込み、疲れて調子を崩します。
- (テレビでの助言)
自分が悩む場合、そういうことも率直に言ってみる。合わない医者がいる。変えたほうがいい場合もある。また、種々の相談機関(保健所、精神保健福祉センター、市役所、など)があるから、そういうところを利用するとよい。
夫の両親との人間関係から、うつ病になる例は多い。彼らが、嫁に不満をぶつけるからである。それを受け止められないくらいに、義父母の干渉、批判、攻撃が繰り返されるならば、別居すべきで<ある。夫が、それを受け入れないような理解や愛情のうすい夫の場合には、妻のうつ病は治らない。「価値・願い」を再考すべきである。
事例7は、学生のようだが、うつ病になって一人でいるのは、自殺される危険性がある。1、2年の休学をおそれると、それこそ「認知のゆがみ」で、長引いたり、自殺されたりして後悔することになる。実家で、静養しながら、治療したほうが早いだろう。学生がうつ病になるのは、ストレスがあったからであり、薬物療法だけでは、治りにくい。軽くなっても、「また、あのストレスが、待っている。」と思うと治りにくい。心理療法によるカウンセリングを併用すべきである。
実家に帰れないと思うならば、その親子関係の修復も大切である。そこも、カウンセリングが必要である。
事例8。医者が、患者にストレスを与えるのは、よくない。診療時間が短いから、そういう患者の心理も気がつかない。こういう状況では、うつ病は、治りにくい。うつ病は、心理的ストレスから起きることが大部分であるのに、医者からもストレスを感じている。医者を信頼できないということは、否定的思考を起こすのであり、うつ病を悪化させる。患者側の受け止め方が悲観的、否定的に解釈する場合があるから、率直に、自分の考えを伝えてみる。もし、それでも、患者が、つらく思うならば・・・
- 医者からは、薬をもらうだけと決めて、悩みは、他の相談機関で、相談する。
- その医者にあうことさえ、ストレスになるのなら、医者を変える。
- それでも薬物療法で治らない場合、薬物療法だけでは効果がない「うつ病」であるから、カウンセラーの心理療法を受ける。薬物療法を受けながら、心理療法も並行して受けることができる。それを嫌う医者がいるとしたら、勉強不足の医者である。アメリカでは、心理療法が大きな効果をあげている。