介護殺人に温情判決

 介護つかれから心中しようと、夫を殺害した妻に、懲役3年、執行猶予5年の判決が2月末(2007)に、あった。この夫婦は介護の間中、日記をつけており、介護疲れの模様がわかる。もともと、仲のよい夫婦で、介護のはじめは、お互い、いたわり、感謝しあって、介護生活を送っていく。やがて、在宅介護の悲惨な状況に、不眠、うつ症状が現われて、二人とも、死にたくなっていく様子が日記に描かれている。夫が殺してくれという「承諾殺人」と認めて、温情判決となった。夫の親族も、妻がよく介護してくれたことを感謝して、軽い判決だったことを喜んでいるという。
 昼間は、介護保険のサービスを利用していたが、夜は、家で二人きりになる。認知症が加わり、時間かまわず起こされる、感情的になる。介護する方が、身体的にも、心理的にも、疲労のきわみで、うつ状態になる。不眠症からは、うつ病になることが多いことがわかっている。HPA系(感情、視床下部、脳下垂体、副腎皮質)が亢進するからだ。介護される側も、自分の状態のつらさ、配偶者への申し訳なさに苦悩し、うつになる。介護うつ病は心因性うつ病だから、ある程度、メンタルケアで予防も、緩和もできるがそのサービスは提供されない。介護の専門家もうつ病に詳しくない。これでは、自殺、心中、殺人が起きる。
 厚生労働省研究班が在宅介護者を対象に行った05年の調査で、回答した約8500人中、約4人に1人がうつ状態で、65歳以上の約3割が「死にたいと思うことがある」と回答した。

介護殺人/防止の支援の仕組みを

 介護うつ病、それからの悲劇は、どこの家庭でも起きる可能性がある。子どもがいても、子どもには、子どもの家庭があり、仕事があるから、夜の介護は、配偶者になる。だから、子どもと同居していても、悲劇が起きている。私の家庭でも、起こりえることだから、他人ごとではないのだ。介護保険でのサービスは限られている。介護付き老人ホームも入居できるとは限らない。この問題は、ほかの人も、子ども頼りの楽観、自分には他に仕事趣味があると無視、傍観していると、自分にも悲劇が起きますよ。そういいたい。
 在宅介護を希望する人に手厚い支援が望まれる。介護保険でのサービスも限られているが、それを求めない心も自分を追い込む。保険外のサービスのうち、介護者と介護される側の双方をうつ病にしないサービスを考えて提供する組織があるべきである。 ( 0703-028 )