女優の小山明子さん・介護「うつ」(2)
 =看病・介護疲れからうつ病

 今夜、12月23日、TBSテレビで、女優の小山明子さんが、ご主人の大島渚さん(映画監督)の介護で、「うつ」になった経過、治っていった経過を紹介した。これは、以前にも、述べた。  監督が96年に、脳溢血で倒れた。思うように介護できず、うつになり、自殺したくなって家を出たこともあった。精神科に入院したが、退院後も、思うにまかせず悩む。4度目の入院の時、作業療法でギョーザを作ってから、「私にもできる」と変わりだした。その後、水泳、ヨガも気分転換になり、5年に治療を終えた。監督は、半身麻痺と言語障害があり、車いす生活であるが、小山さんは、肯定的な生き方をみつけられた。

 うつ病は、薬物療法では治りにくい場合があり、治っても再発しやすい。そのわけは、今、みている「前頭前野」の研究成果から、推測できそうである。抗うつ薬は、セロトニン神経にしか作用しない。それは、主に、抑制の作用であり、限定的な機能である。しかし、うつ病は、集中、判断、記憶、感情・行動の抑制、機能的な行動の選択が阻害されているが、それらは、前頭前野の働きである。うつ病は、前頭前野が活性化しない限り、完治とはいえないようである。薬物療法で、寛解に至ったといっても、前頭前野が活性化しなければ、集中、判断、記憶、感情・行動の抑制、機能的な行動の選択などが不十分で、自信をもてないだろう。さらに、 ストレスがあれば、前頭前野の機能(集中、判断、記憶、感情・行動の抑制、機能的な行動の選択など)が衰えているままでは、再発する。

 小山さんも、好きな料理、水泳などをきっかけとして、治ったようだが、「行動」が、前頭前野を活性化して治ったのだろう。アメリカでも、行動活性化療法が、うつ病に効果があるという。抗うつ薬は、直接には、セロトニン神経への作用で、前頭前野へは、間接的である。だから、完治しにくいのであろう(再発が60%)。「行動」は、単に、運動機能だけではなくて、前頭前野の広い領域を活性化するから、うつ病を完治させるのではないか。これは、研究の価値がある。私どもは、これを見込んで、、自己洞察法のほかに、種々の「行動」をするように、うつ病の患者に助言している。
 一方、自己洞察法の実行が、私どもの「自己洞察瞑想療法」(マインドフルネス、アクセプタンス) の主たる技法であるが、これこそ、前頭前野そのものを活性化させているようだと推測される「前頭前野」の研究動向がある。次回に、ご紹介できるだろう。「自己洞察瞑想療法」やアメリカのマインドフルネス、アクセプタンスの心理療法が、種々の心の病気に効果があるのは、前頭前野の働きそのものを活性化するためのようなのである。