続発! 老老介護の悲劇
=うつ病、心中、心中未遂殺人
「老老介護の悲劇」について、7月31日、テレビ朝日がとりあげた。16時53分からのJチャンネルである。
「4人に一人がうつ状態」
「介護する家族の現実」
「続発! 老老介護の悲劇」
まず、6月17日、さいたま市でおきた、老老介護による心中事件について紹介した。それは、次の記事である。
17日午前9時半ごろ、さいたま市、無職、Dさん(72)方の1階寝室のベッドで、妻(69)が首に電気コードが巻かれてあおむけで死亡しているのを訪れた女性ヘルパーが見つけた。Dさん
は首をつって死んでいた。Dさん方は2人暮らし。妻は寝たきりの状態で、介護していた夫も腰が悪かったという。(毎日新聞HPより 2006年6月17日)
Dさんは、介護保険によるサービスを受けていた。それにもかかかわらず、なぜ、悲劇が起きるのか。
この番組の内容の概略を紹介する。
- さいたまの心中
二人だけで暮らしていた。仲がよかった。奥さんは脳梗塞。その介護を夫がしていた。下半身が動かない。寝たきり状態。週3日、ホームヘルパーや、デイサービスなどの介護サービスを受けていた。夫も腰を痛めていた。周囲には、「洗濯ものをほすのもつらい」「大変で、もう嫌になった」「疲れちゃって、妻をみるのが」と言っていた。
6月17日、心中。
- 埼玉県川口市の海老沢さん夫婦を紹介
ケサさん(79歳)が、清太郎さん(83歳)を介護している。9年前、屋根から転落して以来。ケサさんは毎朝、身体をふく。夫は痛いという。とこずれを防ぐため、時々、ベッドから車椅子に移し変える。たった一人でうごかすのが大変。ケサさんも大きな不安がある。数年前から狭心症。階段ののぼりおりに、心臓がドキドキする。
夫は「早く死にたいよ」という。そうすると、妻も「二人でいっちゃいたいなと思うこともありますよ。」
老老介護、死にたい3割、4分の1がうつ
5月、厚生労働省研究班が、おどろくべき調査結果を発表した。老老介護の家庭では、介護する人の3割以上が死にたいと思うことがある。四人に一人が軽度以上のうつ状態にある。
こうしたことから、自殺、心中、心中未遂殺人の悲劇が起きる。
なぜ、きびしいのか。介護される人へのサービスは、介護保険があるが、介護する人を支援する制度がない。わずかな支援例が紹介された。
(A)東海大学医学部附属病院の取り組み
まず、介護する人のうつ病の治療が重要となる。
精神科では、介護者のカウンセリングを6年前から行なっている。夫婦二人(妻が認知症)で、きたが、夫のうつ病のカウンセリングをしている。
寝たきりの夫が入院中の妻。自宅で一人でいると絶望感がおそう。医者が話をきく。中程度のうつで、薬物療法を続けている。
ストレスの原因とは何か?
なぜ、介護する人がうつ病になるほどのストレスとは何か。渡辺医師はこういう。
- 孤立していて、悲鳴をあげている
- 常に愛する人の喪失感と向き合う。
=認知症や身体障害で変わりはてた姿になっていく。そのたびに、介護者は、寂しい思いをしたり、つらい思いをして、心が打ち砕かれていくわけです。
(B)NPO法人「介護者サポートネットワークセンター・アラジン」の取り組み
東京都の民間のボランティア団体。
- 心のオアシス電話=毎週1回、電話相談。
- ケアフレンド=在宅訪問して相談サービス。
- 牧野代表の話「安心して話せる場所というのをそれぞれの地域に作っていくことが一番必要だと思ってとりくんでいます。」
以上が、番組の内容です。
医療、介護保険などの公的制度だけでは、不十分なのだ。介護する人の4人に一人が、うつ状態なのだから。この人たちの支援が、されていない。地域で、新しい支援の仕組みを作る必要がある。いずれ、まもなく、私ら夫婦も、介護される人、介護する人になる。公的な介護保険サービスや医療は、決まったことしかしない。喪失の心のケアはしてくれない。ほしいサービスを今から考えて、将来受けたいような支援を作りたいものだ。
アラジンのようなサービスに加えて、うつ病の治療・予防のカウンセリングを中心にした活動にしたい。そのためには、賛同者の協力が必要である。多くのスタッフが交代でサービスを提供すれば、かなりの支援ができる。賛同者を募集したい。9月には、シンポジウムがあるので、それを訴えたい。
介護者も、うつ病になるが、医者による薬物療法だけではうまくいかない。種々の悩みを解決してあげないと治らない。心理療法(うつ・自殺予防と治療、グループ・カウンセリングと在宅サービスと)と、介護にまつわる支援サービス(介護者のための息抜き場所、時間、もよおし)を提供したい。あるいは、他のNPOが、周辺のサービスを提供するならば、提携して、こちらは、うつ病の予防、治療に特化してもいい。とにかく、遠くでは、だめで、出張できる距離でなければだめだ。