ながびくうつ病に患者が結集を
効果ある心理療法を普及させる仕組みを作らないと、うつ病が治らない人がいて、自殺はなくならない。
十年も自殺が毎年3万人という異常事態で、自殺対策基本法が制定された。
自殺未遂者の支援対策(17条)は、救急救命センターで支援対策がはじまる。自死遺族支援(18条)は、ライフリンクがとりくんでいる。
自殺対策基本法で、精神疾患(うつ病など)の「医療提供体制の整備」をすることを規定している(15条)が、具体策は、うつ病の患者は、うつとはわからず、身体症状を訴えて、プライマリーケア医(内科医など)にいくので、プライマリーケア医を訓練して、患者を早期に発見できるようにして薬物療法をすること、むつかしいうつ病は精神科医にまわすことが柱になっている。プライマリーケア医は診療報酬をえられるようにする。
これはこれでいい。薬物療法で治る人も多いのだから。
だが、薬物療法では完治しないうつ病も多いことは、研究者の間では常識だ。この方たちの支援がみえてこない。自殺対策基本法には「心理療法」のことは重視されていないので、薬がきかない患者さんへの対策は相当遅れるだろう。15条対策がすすんでも、薬で治らない人がふえてくる数年後に、心理療法の必要性について、世間の理解も深まり、新しい支援活動、研究、人材育成が始まるだろう。数年後だろう。
だが、今、現実にうつ病が薬物療法で治らないで学校や仕事に行けない患者さんは、数年なんて、待てないだろう。1年でも早く、治したいだろう。何かいい仕組みがないものだろうか。
次の案はどうだろうか。地方公共団体は財政がきびしいから、心理療法の提供の支援はむつかしいだろう。カウンセラーを雇用する余裕のある病院も少ないだろう。
健康保険も、未受診患者の薬物療法への導きで、健康保険の支出がふえるから、心理療法を健康保険の対象にすることは、遅れそうだ。しばらく、患者の家族や社員を雇用する企業が費用を負担していくほかはない状況だろう。
「地域別心理療法推進チーム」(仮称)の提案
- 費用
ある都市か県の患者家族(および、企業)が1家族(企業)あたり10万円を出す。そのような、家族(企業)が10人(社)あつまれば、100万円になる。それをもとに、うつ病の治療(実際の臨床)に詳しいカウンセラー(認知療法やマインドフルネス心理療法)を招聘するために使う。距離によるが、半年ほど、数回はカウンセリングを受けることができるだろう。それでやめるか、さらに継続するか、その後のことは、改善効果を評価して話しあえばいい。ただ、治って去っていく患者家族、新しく参加したいという患者家族があるだろうから、治療期間中だけ加入する会員制度でもいいだろう。
遠いところならば、20名集めるか、拠出金の増額が必要である。
この費用をだせない困窮家族も参加していいかどうかは、そのチームの意思による。
- 賛同者の募集
どなたかが、幹事になって、地元の家族会に参加をよびかけるか、推進支援チーム(まず、任意団体)をたちあげる。メンバーの幾人かが中心になって、市役所、保健所などの自殺対策担当(市は支援する責任がある=自殺対策基本法19条)に相談して、賛同者をあつめる活動をしてもいい。市の広報にのせてもらったり、学校、企業にもよびかけたり、ホームページでよびかけたりする。
1人ではむつかしいが、複数でやれば、心強い。
- 会場
公的施設が割安だから、公的施設を借りる(月1、2回、グループ・カウンセリングならば、3−4時間の借用ですむ)のが有力な案。「費用を支払うプログラムに公的施設を貸すことはできない」というのが、最初のリアクションかもしれないが、会員によるボランティア団体の自殺対策基本法の精神のNPO活動であると説明すれば、認めるだろう。自治体は、自殺対策活動をするボランティア団体を支援する責務をおう(19条)。
- 協力してくださるカウンセラー
近いところに住み(招聘する費用が小さくなる)、うつ病に詳しいカウンセラーをさがして依頼する。
- 準備期間
半年〜2年かかる。賛同者がなかなか集まらないだろう。関心を持つのは、患者家族のみであり、応じてくれる人は少ないから。
- グループの名前は「(○○地方)自殺防止対策推進チーム」でも、「(○○地方)心理療法推進期成チーム」でもよろしいので、適切な名称をつける。
こういう活動は、施設から拒絶されていやな思いをしたり、手間、交通費がかかり面倒であるから、患者の家族以外にはやろうとする人が少ないと思います。でも、大切な家族のためならば、がんばれるのです。他の難病でも多く患者家族会が活動しています。
心理療法も完全ではないけれど、アメリカでのマインドフルネス認知療法の臨床試験では、3回以上再発した人が、6割ほどは再発を防止できたといいます。やってみる価値はあるでしょう。
(2008年1月)