ひきこもり支援NPO施設で男性死亡事件

 名古屋市のNPO法人に入寮していた男性(26)が、手足に多くの傷を負って死亡した事件が起きた。同スクールは、ひきこもりや家庭内暴力などで行き場のない人たちの社会復帰を促すことが目的だが、愛知県警は、男性が入寮当初から手錠や鎖などの拘束具で監禁状態にあったとみて、逮捕監禁致死容疑で、関係者を逮捕した。
 報道によれば、代表は「引きこもりは甘え、怠けの結果。しごいてやらないと治らない」などと話したという。
 


 6チャンネル(TBS)「知っとこ!」で、この問題をとりあげた。「ひきこもり」の治療について、体罰容認の戸塚ヨットスクールと、体罰否定派の北斗寮の意見が紹介された。後者は、拉致、監禁、体罰で指導すべきではない。本人の自発的な意志で治すべきだという。私は、後者に賛成したい。本人が、指導を受けながら、自分の問題を分析して、心理的なもちいかたを自ら変えていくことで、「ひきこもり」を改善していく。
 ただ、対人不安や人にあえない弱さ(過度な、ひとみしり傾向等)、はきけ症状等(パニック障害にある)のために、カウンセリングにさえ行けない、そういう人を、治療の場に、どうしたら参加させられるのだろうか。拉致して、治療施設につれていく方法などはとるべきではない。さらに傷つき、病気が悪化するおそれがある。

 ひきこもりは、うつ病、不安障害(対人恐怖、パニック障害、PTSD、全般性不安障害、など)、ボーダーライン、統合失調症、発達障害 などの場合もあるだろう。十分な診断と心理療法がされないで、「ひきこもり」「なまけ」とみなされている危険がある。こういう疾患による場合には、それぞれ、有効な心理療法があり、体罰、監禁など容認していないのだから、体罰によるひきこもり指導は否定すべきである。戸塚ヨットスクールでも、今は、体罰はせずに指導しているが、体罰指導で、3か月かかっていたのが、体罰を用いない指導で、1年かかるという。体罰なしでも、「ひきこもり」が改善されるというわけだ。体罰は必須ではないことを自ら証明している。しかも、重い精神疾患の場合、有効なカウンセリング技法をもちいないで、ただ、集団生活、作業させるだけでは、治らない疾患もある。
 日本では、「ひきこもり」に対して、評論家、分析家は多いが、真剣な治療者が少ないから、多くの人が悩み続けている。(こういう文章を書く時の、私も「評論家」、まさに、この時、「治療」していない。こんな「文章を書くだけでは」いけないことを承知している)。
塾や宿泊施設で、種々の効果ある心理療法を用いないで、無茶な方法か、作業療法の効果のみの期待で指導されている。ながびいて、不幸なことだ。県に一つくらい、公費で、まともな治療施設を開設したらどうなのだろう。

 今日は、グループ・カウンセリングの3回目である。ほかのカウンセラーに展開していただけるように、定型化した技法の開発をこころがげて、新しいカウンセラーでもやれると思えるような多くの新しい教材を提供しようとして、毎回、新しい教材を作成をしながらすすめている。うつ病、パニック障害、対人恐怖、など「ひきこもり」の人に、効果が出てくればいいのだが。軽快、完治して、「ひきこもり」から脱出するまで、カウンセリングを脱落せずに、参加していただけることを願う。「あの人、今日も来てくれるかな」と祈っている。拉致、監禁でも、強制でもない。自分の願い、人生の目標は何か。不登校・休職を解決したい、心の病気を治したい、就職したい、結婚したい、そんな、「願い」があるのでしょう? そのような「自分の願い」を実現するために、親の願い、親からの強制ではなくて、自発的に、カウンセリングにでかけてほしい。