パーソナリティ障害

 DSM-IVでは、次のパーソナリティ障害が区分される。  このうち、境界性パーソナリティ障害が、「自己洞察瞑想療法」で 軽減される可能性があるので、ここに述べる。

境界性パーソナリティ障害の診断基準

 境界性パーソナリティ障害は、対人関係、自己像、感情の不安定および著しい衝動性の広範な様式で、成人早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。
 次の5つ以上の症状があれば、境界性パーソナリティ障害と診断される。

境界性パーソナリティ障害の治療

 人格障害のカウンセリングを数多くてがけてこられた磯部氏によれば、人格障害のうちの一部は、治療困難であり、治療法が確立されていないものがある。しかし、人格障害の一部は、長くかかるが、治癒するものがあるという(1)。わが国でも、パーソナリティ障害の治療に関する本が多数出版されている。そういう研究者の紹介する治療が効果がある人もいるので、治療を受けるべきである。
 新しい可能性として、東邦大学医学部の研究によって、坐禅や腹式呼吸法がセロトニン神経を活性化させ、うつ、怒り、不安などの感情を抑制する力、ストレスに対処する力ができることがわかった。
 これは、感情の抑制、不満な状況を受容する訓練が含まれているが、境界性パーソナリティ障害に対しては、アメリカでは、弁証法的行動療法が効果をあげているという。
 「自己洞察瞑想療法」でも、単なる腹式呼吸法や坐禅ではなくて、さらに、心を洞察する手法、固定観念や認知のゆがみなどを自覚することを通して、この障害の改善を期待できる可能性がある。
 「自己洞察瞑想療法」で治療するとすれば、他の障害と同様に、行動的手法、認知的手法、自己洞察法を用いることになるだろう。  当方でも、この症例のカウンセリングを行うことがあるが、途中で、来談されなくなる事例が多い。クライアントとカウンセラーの双方に、相当の努力が要求される。
 真剣な家族が、自ら改善していくための参考書もある。暴力は絶対に許さないという約束を守ることが治す大前提である。
 アメリカでは、自己洞察法に似た瞑想をとりいれた「弁証法的行動療法」で、境界性パーソナリティ障害の治療に効果をあげている。今後、日本でも、専門家がこの治療法の研究にとりくむ価値がある。当協会には、施設や人的余裕がなくて、将来の課題である。
(注)
パーソナリティ障害 自殺未遂患者6割、境界性パーソナリティ障害