脳卒中後のうつ病

 どのような悩みでも、その心理的対処をうまくしないと「うつ病」になるおそれがある。身体の病気になっても、それを心理的に苦にしすぎるとうつ病を併発する。それに気がつかないでいると自殺される。自分の問題がつらいもので、コントロール不能である、解決できないということが予測されて、否定的な思考を繰り返すと、うつ病になる。
 脳卒中の後にも、うつ病になるリスクが高い。私の母も、私が中学2年の時に、脳卒中で、半身不随となり、思うように家事ができないことを苦悩して、自殺しかねない状況となったことがあった。
 脳卒中は、ありふれた病気であるが、その後に、うつ状態になる割合は、報告によって、15〜72%である(1)。時期は、脳卒中の発病後、3〜6カ月の時期に、うつ状態になることが多い。脳卒中の後には、リハビリを必要とするが、うつ状態になると、そのリハビリの意欲も減退するので回復を遅らせる。論文の著者のところでは、うつになった時、SSRIなどの抗うつ薬や、支持的なカウンセリングを用いているという。
 脳卒中のリハビリ患者は、うつ状態になるリスクが高いから、予防的な意味でも、早い段階から、仏教カウンセリング(自己洞察法)の技法を導入してはどうだろうか。リハビリの中に、呼吸法を同時に加えたり、自分の悩む心を観察して、障害があるという苦悩の思考から離れる心の訓練をいれるのである。このような、精神科以外の領域で、やさしい呼吸法が貢献するカウンセリング技法がある。その領域の専門家が基本的な自己洞察法を習得して、その領域に適した改変を加えて指導していただければ、うつ病の予防、治癒になるだろう。