脳外傷後のうつ状態
=リハビリテーション患者と「うつ」(2)
どのような悩みでも、その心理的対処をうまくしないと「うつ病」になるおそれがある。身体の病気になっても、それを心理的に苦にしすぎるとうつ病を併発する。それに気がつかないでいると自殺される。自分の問題がつらいもので、コントロール不能である、解決できないということが予測されて、否定的な思考を繰り返すと、うつ病になる。
「リハビリテーション患者とうつ」を特集した雑誌があるので、そこから簡単に事情を要約している。今回は、「脳外傷後のうつ状態」である。
リハビリテーション専門病院で治療を必要とする外傷性脳損傷(脳外傷)の患者に、うつ状態が出現することがある。当雑誌に、その割合を報告した事例が、紹介されている。以下、雑誌の論文による(注1)
- 外傷後、1−2か月で、27%、42%。
- 外傷後、24か月以上で、77%。
- 外傷後、6−60か月で、67%。
- その他
脳外傷後の、うつ状態として、「記憶・注意・集中力の低下、人格変化、情緒や行動の障害などを呈している。なかでも、不安、抑うつ、脱抑制、易興奮性、病識欠如などの情緒や行動の障害は、リハを進めていくうえで大きな問題となる。」(注2)
そのような「うつ状態」は、脳外傷による神経伝達物資の代謝異常、神経内分泌系の変調、病巣との関連、社会的要因などいくつかの原因が報告されている。
論文の著者の病院では、リハビリテーション患者のうつ状態に対して、環境調整や薬物療法(SSRIなど)を行っている。
「自己洞察瞑想療法」も、注意力の向上、感情処理法の効果があり、うつ病に効果があるので、リハビリテーションの場でも、試験的に適用してみることをすすめたい。
- (1)「脳外傷後のうつ状態」岡本隆嗣、他、雑誌「臨床リハ」(Journal of Clinical Rehabilitation)2005年8号、医歯薬出版(株)、715頁
- 同上、715頁