うつ、自殺未遂、脊髄損傷
 =うつによる自殺企図が原因の脊髄損傷

 雑誌「臨床リハ」で紹介されているリハビリテーション現場のうつについて、みています。
 自殺が、毎年3万人以上という危機的な状況が続いています。この数のほかいに、自殺をはかった結果、命はとりとめたが、自殺実行のために、脊髄損傷という後遺症が残ってしまう。そのリハビリテーションの現場での、うつ、について紹介されている。

ある事例

 精神疾患で治療中の人が、ビルから飛び降り、脊髄損傷となり、リハビリテーションを受けることになった事例が紹介されている(注1)。
 この以前に、精神疾患があった(だから、飛び降りた)のに、加えて、脊髄損傷を受けたのであるから、苦悩はさらに大きくなったはずである。だが、その人は、「治りたい」という願いが大変強かったので、リハビリテーションのスタッフの指導で、復帰していく。精神科医、訪問看護師、保健師、職業リハ施設、通院時のJR職員、など広い人々の支援を受けて、復帰していく。このケースは、数少ない成功例だという。スタッフが「どんなにチームアプローチを尽くしても、最終的に身体機能面の自立や就労が可能になるなど社会的な自立が得られる例は本例以外にはない。」(注2)という厳しい状況だという。
 この事例では、共感的対応、積極的傾聴が基本とされた。薬物療法は、精神科医の指示処方で行った。幸いにも、成功した例である。
 これは、自殺未遂をきっかけに、リハビリの病院に変わったことが、よくなった理由の一つだろう。精神疾患に対するとりくみ方が、病院によって、事情によって違うからである(大田)。この病院は、手厚い取り組みがなされているようで、貴重であるが、それでも、復帰していく割合が低いという。

交通事故などでも起きる

 脊髄損傷は、交通事故などで、いつ、身近かな家族に起きるかもしれない。がん、脳卒中、糖尿病、なども多い。深刻な障害、病気になれば、何でも、「うつ病」になる。人生上には、種々のストレスの大きい出来事が起きる。心理的な対処、ストレス対処が必要となる。家庭でも、病院でも、その対策に力を入れてほしい。
 精神疾患による自殺企図、そして、脊髄損傷では、自動車事故などによる脊髄損傷とは違う苦労が、患者にも、リハビリテーション関係者にもあるだろう。自殺未遂する前にも、精神疾患があって、治らないから、自殺しようとしたわけである。それなのに、精神疾患は残り、脊髄損傷が加わった。その本人の苦悩は、深刻だろう。
 このようなケースのほか、政府の対策でも、自殺未遂者のアフターケアに力を入れる取り組みが始まったばかりだ。その場合は、身体の後遺症は残っていなくても、入院してもらって、精神疾患の治療を行うとりくみである。
 リハビリの現場での「自己洞察瞑想療法」は、うつ気味になりやすい患者の心を改善するとしたら、徹底受容法(アクセプタンス)や、呼吸・感覚傾注などで、否定的な思考を少なくして、感情処理を習得してもらい、抑うつ気分の改善を期待していくことになるだろう。