6=老年期の苦悩
環境整備(1)=「陽だまりの里」プラン
痴呆高齢者、知的傷害者、介護が必要な人などには、それぞれ、行政サービスや保険があって、かなり保護されている。
どれにも該当しない高齢者の孤独、うつ病、自殺が問題である。物的なサービス不足ではなくて、「心の問題」である。この方面の問題解決への取り組みが遅れている。一人住まいの高齢者が、孤独からうつ病になり、自殺する。家族と同居していても、家庭の中で、孤独感を味わっていて、家族が有効な対策をとることができず、うつ病に気がつかず、自殺されたり、家族から虐待されたりするのをどうすれば解消できるか。
虐待の記事をみてほしい。家庭でも施設でも高齢者への虐待がある。身体的、心理的な虐待を加えたり、高齢者の年金、預金を家族が無断で使用するとか、使用を制限する「経済的虐待」がある。
調査によれば、人間関係の問題や、介護疲れや仕事でのストレスをかかえて、高齢者(たいてい実の父母か義理の父母)にやさしくできない。こういう要因には、心の問題が関係する。かねて、心の問題について探求しておく必要がある。
こういう虐待に関連する問題は、公的制度の活用、種々のNPOなどの協力など別に考えることが必要である。
ここでは、家族との問題はなくとも、一人住まいの孤独からうつ病、自殺への問題の予防のために、同居して迷惑をかけたくないとか、自由でいたいが、いい方策がないという人に一つの提案をしてみたい。
まず、自分の住む地区に高齢者のあつまり、高齢者支援活動があるはずだから、まず、そこに参加することを検討する。それでも、その活動が満足できない、いじめにあう、主宰者が傲慢、心の問題に理解がない、などの不満があれば、さらに、広い領域で、取り組むことができないだろうか。
田舎の施設やホテルなどに滞在して、気のあった友だちと自由に行動、自由に生活してみてはどうだろうか。できるだけ、低価額で実現するためには、システムづくりが必要である。あるいは、今、居住している地区に、そのようなシステムを構築できるか。
会員が一定数に達して、このような問題に取り組みたいという希望が強くなった時、共感する会員、ボランティアの方の協力で、実現に向けて準備作業にはいる。
「陽だまりの里」プラン
高齢者が、息子や娘たち家族と同居したくない場合であって、有料老人ホ−ムなどには、入居できない(入居一時金が高額で)人が、うつ病になったり、自殺しないようなプランがないものだろうか。同好、仲間の高齢者が、「ご近所」に居住して、楽しく生きるシステムを一つ提案してみたい。
緑豊かな田舎の民宿、ペンションなどに住み、あるいは、空き家を借りて住み、「生きがいある生活」を送る。共感できる会員(ボランティアの協力を得て)たちが実施して、共通の集まりの場所を設けておいて、自由に集まる。仮に「陽だまりの里プラン」と呼んでおく。
協会の所在地に、それができるかどうかも、検討するが、他の地区の人が賃貸するには家賃が高額だとか、時々居住したくなる魅力ある環境か、狭い地区から協力してくれる人々がいるか、など課題がある。全国規模で共鳴者を募集して、場所なども調査の上、検討したい。
- 希望する期間(1週間、1か月、1年)、比較的低額で、安心して、希望する土地に居住できるシステム。
- 有料老人ホームなどの団体が建設、運営する施設は、高額の入居一時金が必要で、その運営主体が倒産しないかという不安もある(すべてではないが)。また、団体や個人が主宰・管理する施設では、スタッフによる虐待、自由の束縛の不安がある(すべてではないが)。また、主宰者の宗教思想を押しつけられるカルト(宗教)の様相を帯びる不安もある。ただし、すべての施設、主宰者が悪いわけではないことは、当然である。できれば、施設に入らないで暮らしたいと思う人が多い。
- 既存の施設に入居したいという人はよいが、施設に入居することに種々の不安を持つ人は、既存の形態を利用するのをためらう。そうすると、孤独、うつ病を避けることがむつかしい。
老年をむかえた人が安心して、一人でも(老夫婦でも)、友人たちと希望する土地に散在して(民宿、ホテル、民家は違うが)ご近所に住み、孤独にならないような生活スタイルを持つことができるシステムを考える。
- 幾つかの地区の旅館、民宿、ペンションなど数件の協力があれば、実現できると思われる。また、自炊できる人は、空き家を借用する。溜まり場となる場所(ホテルのロビー、会議室でもいい)を指定して、さびしくなったら自由に行って、話す、遊ぶ、趣味を行う。そこは、地区の人にも開放されて、交流をはかる。公共施設(会合、催しに公共施設を提供)、医療機関の有無も考慮する。
提案のプラン
- (注)
会員が多くない間は、旅館などとの独自の契約を求めず、会員の推薦により(割安で快適な)数件の旅館、ホテルなどを選定しておいて、会員が、打ち合わせをして、同じ旅館に同じ期日に宿泊して、その地で行事に参加し親交を深めるという方法で、始めることができます。このプランに賛同してくださる人は、狭い地域では多くを望めない。全国から加入していただくことを期待したい。
- 民宿、ホテルなどの一般客と同じでは、高齢者では食べきれないほどの食事量、高価な料金のため、長く滞在するには向かない。そこで、1地区に、数件のペンション・ホテルなどの1,2室をこのプランの利用希望者に通常料金より安く、一般客向けの豪華な食事とは別の質素な食事を提供する(長期の湯治型旅館ではそのままでよいカースもある)。契約は、ホテルなどと希望者との直接契約にすれば、主宰者の搾取、倒産、カルト的な思想束縛などの不安はない。会員は、民宿、ホテルなどの1室に居住するので、虐待、自由の束縛の不安もない。その近隣で、その人たちが、いきがいある活動をすすめていけばよい。
- 近隣に、うつ病の治療、自殺防止、温泉療法等に積極的な医師がいる場所には、さらに、別の構想を付加することができる。もし、うつ病や不安障害の治療について熱心な医者がいれば、高齢者対策ばかりではなくて、難治性の精神疾患(ながびく、うつ病、不安障害など)でひきこもりになった人々のカウンセリングセンター(既存の施設を時間借り)をその里の一つに作り、全国の患者を希望により入院(協力医院)、または旅館、民宿、民家での長期滞在により、薬物療法(その医師による)と心理療法の双方により、治療することを推進できる。その活動の一部に高齢者がボランティアとして参加してくれる人がいれば、高齢者にとっても「いきがい」となる。
- 経済的自由の確保
- 利用者を経済的に束縛しないために、高額の保証金・権利金などの前払いのないシステムにする。利用のつどの支払いのみ。
- 協会と利用者の間で、利用料の授受はない。会員と民宿・ホテル、医療機関、などとの直接契約とする。会員が、1日、1週間、1カ月、希望する期間、宿泊することをホテル、民宿側に申込み、滞在し、宿泊料は、会員が、直接、ホテル側に支払う。
- 会員は、ホテルに滞在した日数分の宿泊料(食事代も)を支払うのみである。権利金、保証金などは支払うことはない。協会への手数料などもない。
- 身体的自由、心理的自由、思想的自由の確保
- 普通の民宿、ホテルなどの1室に宿泊する。他の宿泊者と同様であるから、
ホテルの人との接触があり、自由に外出し、その地で同好の人と活動して、孤独感を免れる。
- 社会・情報から隔離・遮断されておらず、高額の権利金などを支払うわけでもないので、いつでも、そこから、離れることができる。結局、自由意志によるホテル・民宿での長期滞在である。
- 住むことを利用する以外は、自由である。政治、宗教、文化などの行動は、利用者の個人の自由であり、個人の責任である。
- ホテル・民宿側も損失を生まない
- ホテル側の利点として、週、月単位の滞在客も現れて、閑散期にも長期滞在の顧客を確保し、稼働率向上の可能性がある。
- ホテル・民宿側は、滞在した日数の宿泊料を得る。通常の宿泊提供である(ただし、食事は廉価なものを提供)から、特に、損失をこうむることはない。
- 協会も損失(利益も)を生まない
- 協会は、情報を会員に提供するのみである。リベートなどは得ない。協会は、このプラン独自の金銭の投資、支出はない。
- 協会からの講座、カウンセリングなどは、他の事業同様(現地近くに住む指導員の育成が課題)に提供するから、多少の支出は、損失とは考えない。
- 病気になってからの住み方は、難しい問題である。とりあえず、身体の病気でもないのに、「うつ病」、自殺、虐待になることを防止するシステム作りが、第一ステップである。
- (注)利用者が損失をこうむらないような契約条件設定
- 協会が実施するプログラムは、参加者が、経済的、身体的、心理的、思想的、宗教的、政治的、職業的に抑圧、拘束されない環境(「種々の自由」)、条件を設定して、いつでも、自由に脱退、中止できるようにする。
- 「陽だまりの里」プランの参加者が、既成の民宿、ホテルの一室に居住するのは、その環境づくりのためである。「種々の自由」を確保しながら、家族や施設のスタッフからの虐待、孤独、うつ病、自殺においこまれないで余生をすごす生活スタイルを考えていく。
- 会員が多くない間は、旅館などとの独自の契約を求めず、会員の推薦により数件の(割安で快適な)旅館、ホテルなどを選定しておいて、会員が、打ち合わせをして、同じ旅館に同じ期日に宿泊して、その地で行事に参加し親交を深めるという方法で、始めることができます。この協会の理念に賛同してくださる人は、狭い地域では多くを望めない。全国から加入していただくことを期待したい。
さらに
- 上記の提案では、宿泊料が高めになる。都会近くでは、望めないが、空き家を安くで賃貸する空き家が存在する地域に、別々に(あるいは、共同で)借りて住むこともよい。グループのシンボルとなる溜まり場、集会所も借りる。
- 各地で、高齢者、要介護者のための「ついのすみか」(高額の入居金がいらない)を作るプランがいくつか開始されている。およそ、次の要素がある。
- 賛同者が近くに住むこと(同じ集合住宅か、別に住むが、互いに歩いていける距離、つまり、同じ町内)
- 共有スペースがあって、そこに行けば、仲間がいて、孤独にならない。そこに集い、趣味、などができる。
- 食事、掃除、心理的サポートなどが必要な人のために、有償・無償のボランティアの人々のサービスを受けられるようなシステムが備わっている。介護が必要でない間は、会員や地区の住民が、ボランティアとなることも多い。
- そこに住むのに、高額の入居金がいらず、年金程度で、暮らせること。
- もともと、離れたところに住むことなく、現在住むところで、すみ易いシステムを作っていくのがよいようである(それも検討する)が、その地区によって、取り組みが異なる。その狭い地区で、満足のいくすみ方ができず、孤独になるよりは、全国から賛同する人々が、集まるのもいいのではないかと思う。
- 介護が必要になった時には、在宅介護、施設介護のいずれでも介護保険を利用するサービスがあるが、情報を知らずにサービスを十分に受けなくて、本人や家族が悩むことのないように、種々の相談できる機関を利用したい。