妻の死によって、「うつ病」に
倉嶋厚さん(78)。著名な気象キャスター。
(大田評:それぞれの専門分野で、すぐれた業績をあげた人でも、人生の危機には弱い。政治家、文学者、経営者、タレント、など著名な人が、うつ病になり、自殺する。倉嶋さんも、妻のガンにうろたえ入院して余命いくばくもない妻の前で大声で泣いた。妻の亡き後はうつ病になり、自殺願望まで生じた。)
朝日新聞の「ひと」 9/14/2002
- 「気象庁を定年退職し、テレビや新聞、雑誌を舞台に活躍。緻密な科学の目と豊かな詩心で、気象について語ってきたが、人生の木枯らしは予想を超える激しさだった。」
- 「がんを患い、余命わずかの妻を前にしての取り乱しようは尋常ではなかった。5年前のことだ。亡き後の不安に耐えきれず、外出先で失禁し、病室で号泣してしまう。」
(大田評:がんにかかっている妻のほうが、悲しさ苦しさが大きいはずなのに、妻の前で、夫がこんなに泣き乱れたら、妻の悲しみ苦しみは、さらに倍加するでしょう。それがまたストレスとなり、免疫力を落とし、病気を悪化させ、余命をちぢめるおそれがあります。闘病と死の恐怖に直面する妻を思いやり、最期をおだやかに暮らしてもらったり、妻への感謝の言葉さえでてきません。倉嶋さんは、そのことに、妻の死後に気がついて贖罪(しょくざい)感をいだいています。
妻の人生観の覚悟の方が上で、妻が自分のがんがひどいということを本人は知って、「夫は弱いから、夫には内緒にしてほしい」と医者に頼むケースがまれにあると言う。倉嶋さんは、そんな弱い人であったようです。)
- 「喪失の悲しみは、うつ病を発症させ、「後追い」を誘った。」
(大田評:妻に先立たれた男性は、5年以内に死亡することが多いそうです。うつになり、免疫がおとろえ、ガンなどの重病にかかり、なくなりやすいようです。配偶者の死亡によって、「うつ病」になる人が多いのです。そして、ひどいと、自殺する。自殺しなくても、悲しみのストレス解消に失敗すると、免疫力が衰えて、重病にかかりやすい。倉嶋さんも、自殺したくなったのです。)
- 今は立ち直り、その体験を著書に
「出版社が派遣したライターの質問に答えていくうちに、後悔や贖罪(しょくざい)感の元にある自分の弱さが浮き彫りにされた。妻を失った悲しみは消えないが、今は今の人生があると思えるようになった。」
(大田評:成功している人は「自分の弱さ」を自覚していないことが多いのです。それは、伝染病に無知で予防対策をとらないようなもので、人生上の何かがあった時、もろくも崩れます。)
- 「妻が死んでから立ち直るまでにうつがあったのだから、うつを辛抱して通り越すことが新しい人生の契機になったといえるでしょうね。」
- 「(うつの)再発の可能性が全くないわけではない。「そのときはまた、泣きわめくようになるのかな」明日を思い煩わないという境地に、悠然と立つように見えた。」
- 朝日新聞、「ひと」 9/14/2002
(大田評)
- 自己洞察瞑想療法は、もし、その人が「死」の問題で苦悩するならば、死の問題も追及しますし、「うつ病」を回復・予防します。精神的に弱いところがあると思うかたには、自己洞察瞑想療法をおすすめしたい。
- 本当は、精神的に弱いとは思っていない人(倉嶋さんや多くの自殺した著名人のように)もあぶないのです。成功している人、順調な人もかねてから実践してほしい。何かライフイベントがあると、かねてある「固定観念」が賦活して、悩みうつ病になる。しかし、苦におちてからでないと、する気にならないのですね。「うつ」になり、仕事をやめる、自殺する。それほどに、自分のことがわかっていない。
- 著名人でなくても、毎年3万人が自殺します。心理療法の心構えを知っていれば、自殺しなくてすむはずです。すべての人が、予防的にふだんから実践してほしいと思います。