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災害ストレス・自己洞察瞑想療法
災害ストレスと病気-行動療法的対処法
ストレスを軽減
事故・災害ストレスを克服する生き方を列挙しておく。< >は、マインドフルネス心理療法(自己洞察瞑想療法)らしい対処法。
応急措置として、短時間でもいいですから、呼吸法をしてください。副交感神経が活性化して、緊張、興奮をしずめます。不安過敏、うつ病、パニック、PTSDなどに、かなり効果があります。
- A)失われた過去を嘆かず、残された現実を見て、前向きに受け止めていく。<嘆くと、うつ病をもたらすような神経生理学的反応が起きる、意欲が失われる。このつらい状況でも生きていく必要がある>
- B)現実を受け入れていく。<現われた現実は過去である。終わった後であり、くつがえらない。嘆くと心の処理におわれて、現実の復興の行動ができない。>
- C)支援してくれる人、機関に相談する。(感情におおわれた心では判断力、行動力がそこなわれるので、冷静な人の支援を求める。)
- D)つらい体験を語りたい時は抑えず、信頼できる人に語る。<縛らない、縛られない、そのまま、自然のまま。マインドフルネス心理療法を習得している人には、つらい経験の念が浮かんでもそれをつかまえるな、という指導になるのだが、初歩の人では、それもできないなら、思いながら、おさえつけるのはよくない(それではストレスがたまる)から、親しい人にはきだして、すっきりさせるとよい。>
- E)少しずつでも行動する。<悲観的な思考、主観的な基準で縛らなければ、心は自在に動く。行動すれば、前頭前野などが活性化して、自分の心身と周囲の状況が変わる。>
- F)閉じこもらないで、他の人(家族、近所、同好の人など)と接触していく。閉じこもると、つらい思いがわいてくる。それがひどくなると、引きこもって人にもあわなくなるのは、うつ病の前触れであり、家族との関係もおかしくなる。医者にみてもらうべきである。<苦悩に取り付かれていると、本来自在な命を殺す。なくなった人を悲しみすぎて、うつ病となるあなたを見て、亡くなった人は喜ばない。>
- G)家族の絆を大切にする。つらい人にとって愛する人と一緒にいることがストレスを軽減させる。<家族はあなたのことを真剣に思ってくれる。その愛を感じる時、苦悩は軽くなる。>
- H)親が精神的に不安定、不和であると、子供がストレス性の病気になる率が高い。親がストレスに負けないようにする。親が不安定になると、子供のことをよく見られなくなり、子供はそれを親から嫌われている、無視された、などとと解釈し、非行に走ったり、心の病気になるおそれがある。
- I)ふだん、内向性、神経質の人が、大きい事故にあうと、ストレス性の病気になりやすい。ふだんから、考え過ぎる、後悔する、気にし過ぎる傾向を改める。災害に見舞われると、自分の思いどおりにならないことが多いから。<本来、自由自在の自己なのに、自分の主観的な考えで勝手に縛り、勝手に評価する。そんな頭にかかわらず、心身は動くようにできている。思いどおりにならないことも、そうなる反応が起きるべくしてなっていると受容する。
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- J)完全主義傾向の人も何かあれば、ストレス性の病気になりやすい。自分を責める、他人を責めることをやめる。これも災害があると、そういう場面が多すぎて、ストレスになる。<自分の心身も他人の心身も、自分の思いのとおりに動くのではない。つらいことも、一人だけの責任ではなく、種々のことが複合しておきていく。>
- K)災害の時の行動を振り返り、自分や他人を責めると、家族の絆がこわれる、心の病気になっていく。災害の時は、異常時であり、非常時であり、感情や生命保存の本能によって、思いがけない言動になる。誰でも正常な行動はできない。あの非常時の自分や家族の行動、他人の行動について振り返り、責めない。許す(その当時のことを受容する)。<わざとしたのではない、感情や本能によって、思わず知らず、動いた結果である。>
- L)子供に完全主義を求めてはいけない。子供の怒り、嘆き、恐怖は抑圧せず、受け入れる。<感情を表現するのも自然である。とめられるものではない。>
- M)つらい状況や、たとえ心の病気になっても、長くは続かないで必ずよくなるということを信じる。<思考で悪いと評価しなければ、そのままが自然。なるべくして(神経生理学的に)生じている症状である。あるがままにまかせておけば、治まるものは治まる。つらければ、医者に相談すればよい。>
- N)抑うつや不安が強い場合、精神科医にみてもらったほうがよい。軽いうちにみてもらうほうが、早くなおるだろう。
終りに
この記事が災害や事故にあった方や知人の目にとまり、「実際に被害にあわない者に何がわかるか」と思われるところもあるかもしれない。確かにそうです。言葉と現実のわが身による体験は絶対に違う。もし、気にさわることがあれば、お許しいただきたい。災害にあわれた人、これから同様の被害にあうことが確実な(愛する人や自分の死はすべての人を襲う)すべての人に、ストレスを乗り越えていった人、人間の心の綾などストレス軽減になるかもしれないエピソードなど、参考になるかもしれない事例を集めて、ご紹介した。災害とストレス、その解消については、マインドフルネス心理療法においても重要な課題である。これを真剣にやる人ならば、上記よりさらにすすんだ対処をするだろう。
以上のことは、ストレスの軽減や心の病気の予防に参考になるが、すでにPTSDやうつ病が発病してしまったら、精神科の医者に行くべきである(1)。軽いもの、ながびくものには、マインドフルネス心理療法もこころみてもらいたい。
(注)
- (1)災害とストレスについては、一般向けの解説書として、管見にはいったものは、次がある。
- 「被災者の心のケア」(「現代のエスプリ」1996年2月、至文堂)がある。
- ビヴァリー・ラファエル「災害の襲うとき」みすず書房、1995年。
- 「災害とトラウマ」こころのケアセンター編、みすず書房、1999年
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