心身症とは

 心理的ストレスによって、身体の種々の部位に病気が起こる。精神的なストレスによって症状が起こったり悪化する病気は、「心身症」と総称されていて、種々の身体領域にある。自律神経が各種臓器にはりめぐらされている。ストレスにより、ホルモン、免疫系を通じて障害を引き起こしている。
 自律神経失調症、片頭痛、十二指潰瘍、胃潰瘍、神経性胃炎、気管支喘息、過敏性腸症候群、帯状疱疹、狭心症、心筋梗塞、高血圧、アトピー性皮膚炎、リュウマチ、甲状腺機能亢進症などである。
(このような疾患は、心身症としての要素を持っていることがあるが、これらの疾患の患者すべてが心身症であるわけではない)。

心身症になりやすい背景

 東邦大学の有田秀穂教授は、坐禅(呼吸法)とセロトニン神経の関係を研究しておられる。(『セロトニン欠乏脳』有田秀穂、NHK出版)
 心身症との関係では、次のことがいえる。セロトニン神経は痛みの神経回路の脇から抑制をかけるが、セロトニン神経が弱ると、種々の痛みが発生する。精神的ストレスによってセロトニン神経が弱って、痛みを抑制しないことによって起きる痛みの心身症ならば、呼吸法を中核としたマインドフルネス心理療法によって痛みが軽減される。
 また、セロトニン神経は、感情(ノル・アドレナリン神経の働き)を抑制するが、精神的ストレスが感情を生み、神経、ホルモン、免疫に影響する。そのことによって、身体の種々の領域の病気が起きる。
 呼吸法をすれば、弱ったセロトニン神経が活性化され、感情を抑制、コントロールするので、種々の心身症が軽減される可能性がある。
 たとえば、片頭痛の患者は、セロトニン神経が弱っている場合があり、うつ病の薬で軽減されることがある。それならば、呼吸法の継続により、自ら内部でセロトニン神経を活性化させる呼吸法で片頭痛が改善できる可能性がある。
 免疫力が衰えると、がんが発生する。新潟大学の安保徹教授が免疫とがんの関連を研究している。がん細胞を殺すナチュラルキラー細胞は、副交感神経によって活性化し、ストレスなどによって交感神経優位になると、ナチュラルキラー細胞は活性化を低下させる。これによって、精神的ストレスががんの発生、悪化に影響する。

心身症をマインドフルネス心理療法で緩和

 これらの病気は、精神的ストレスを軽減すれば病気が治ったり、軽くなる可能性がある。
 「心身症」は、本人にとって、長く苦痛を感じるもので、仕事や日常生活に支障をきたす。これが、呼吸法や自己洞察瞑想療法の実践によって、軽減できるのであれば、社会に貢献できる。
 精神的ストレスを軽減すれば、心身症が治ったり、症状が軽くなる可能性があるので、心身症の症状を軽減させる目的で行う。
 精神的ストレス、神経、ホルモン、免疫の関連を理解する。これによって、精神的ストレスが、神経、ホルモン、免疫系の病気をひきおこすことを理解する。実践への動機づけとする。
 症状に応じて、各種の技法を併用する。思考を抑制する作用が弱いために、自動思考を起し、自律神経失調の状態のクライアントが多いので、思考をコントロールするスキルの活性化を訓練する。
 カウンセリングは、3−6カ月程度で修了する。症状が軽減され、その後も実践すれば、悪化を防止できる可能性が高い。ほかの心身症や、心の病気の予防にもなる。心身症が悪化し、長引くと、うつ病を併発する可能性があるからである。