研修医教える指導医も2割うつ状態

 病院で研修医を教える指導医の2割が「うつ状態」に陥っていることが、文部科学省の研究班の調査でわかった。同研究班の調査では、研修医の4人に1人がうつ状態に陥っていることがすでに明らかになっている。指導医が研修医に与える影響は大きく、研究班は「病院は指導医が余裕を持って気持ちよく指導できる態勢を整えるべきだ」としている。

指導医のうつ状態

 「週3日以上直接研修医を指導している」実質的な指導者175人をみると、うつ病になる可能性が高い「うつ状態」と判断された人が37人(21%)にのぼった。

 要因では、対人関係や仕事の質よりも「仕事量が多い」ことをストレスに感じている人が多かった。実際、1週間の平均勤務時間は75.7時間と多い。一方で指導医の仕事の達成感は高く、「疲れてはいるがやりがいは感じており、熱意に頼っているのが現状」とみる。

研修医のうつ状態

 同研究班が03、04年度に研修医を対象に行った調査では、初期研修開始後にうつ状態になった人が、1〜2カ月後の時点で約25%いたという。  研究班では「病院側は指導を業務としてカウントし、その分診療の負担を減らすなどすべきだ。指導医のストレスが減れば研修医も精神面が安定し、ひいては良い医療の提供につながる」としている。 (朝日新聞 6/21/2005 夕刊)


 指導医は医者を教育する医者である。病気について専門家中の専門家であるのに、うつ病になりかけている。ここに、うつ病、自殺問題の深刻さがある。04年には79人の医者が自殺した。うつ病の専門家であってほしい医者が自殺する。
 指導医がいる病院は大きい病院であろう。そこには、うつ病に詳しい医者はいないのか。内科医でもいい、心療内科医でもいい、精神科医でもいい。種々の身体の病気に、うつ病が並存する。身体の病気と思われるのが、実はうつ病であったということも多い(うつ病には、自律神経失調症状のような身体症状が伴うことが多い)。大病院ならば、一人くらいうつ病に詳しい医者がいないのか。本当におかしい。このような状況だから、一般患者のうつ病を見落とす。うつ病の治療をしないで、対症的な薬物投与が行われる。
 種々のむつかしい身体の病気(がん、脳疾患、心疾患、耳、目の病気・・・・・)があり、その診断法、治療法を研究、習得しなければならないので、すべての医者が、うつ病の予防法、治療法に詳しくないのは理解できるが、大病院に一人も、うつ病に詳しい医者がいないのは、問題ではないか。一人でもいれば、その病院での勤務状況が、うつ病を起こすおそれがあると判断すれば、あるいは、同僚の医者の様子から、うつ病になりかけていると判断すれば、その対策を進言するだろう。
 まず、指導医自身が、心身の健康状態であってほしい。そうでないと、研修医、他の医者もストレス状態になる。患者もその医者から最高状態での医療を受けることができなくなる。
 人は、自分が身体状態、精神状態ともに、健康で、安定していないと、認知のゆがみ、行動のゆがみが起きて、実力を発揮できず、他者に、やさしくできない。判断力が変化しているので、診断ミス、見落とし、医療事故もおきてしまう。
 医療関係者がストレス緩和の対策をとっていただきたい。そこでは、薬物療法ではなくて、心理療法や、予防的なカウンセリングの手法が必要である。