ひきこもり、家庭内殺人の解決支援ができないのか

 親が子を殺すとか、子が親を殺すとかいう事件が続発しています。そこまで、おいつめられなくても、多くの方が、社会に出たいのに、出られない人がいます。

 最も大切なはずの家族内で、殺しあうのは、異常なこころです。カウンセリング理論や犯罪心理学などで、親の育て方で、子どもが、ひきこもり、DVになる危険が高くなるというでしょうが、すべてがそうであるわけではないのですから、本人にも責任があるわけです。同じように育てられても、ひきこもり、DVをしない子もいる。他人のせい、自分のせいということでは、心の病気などは解決しない。(社会問題は別です。そういう責任を追求すべきです。しかし、心の病気やひきこもりなどを治すには、本人は、どうすればいいのかを明確にして、その行動を起こしてもらう。
 最後の治すところまでのスキルを持たず、治すことに関わっていない相談者、評論家、カウンセラーがそういうふうに本人に伝えることは危険です。親への責任転嫁と親への増悪が加わるだけの悪影響をひき起こすリスクがあります。
 私は、親のきびしさ、育て方、子どもへの差別などの影響があると推測されるクライアントがきても、「親が悪い」とは言いません。「あなたの悩みを解決するのに、あなたができることをしましょう。」と言います。ただし、親が一緒に来るばあいには、子のいないところで、親に忠告します。
 私どもは、病気になった本人に接する時には、原因を他者のせいにすること、自分を責めることのどちらもやめようという方針です。他者のせいにすると、恨み、増悪がわいて、治らず、病気が悪化するからです。自分を責めることも、抑うつを深めて、悪化するからです。そういう過去の原因を詮索するのではなくて、「今の自分がどうあれば治るのか」、その心の用い方の訓練に、専心してもらいます。メンタルな要素(うつ病、不安障害、依存症、など)ではない場合には、他の専門家の支援を助言します。
 DVが始まるのは、不登校、ひきこもりになったのは、(心の病気、心理的ストレスによるのである場合でも)、「親(だけ)のせいだ」ということに気がついた(インターネットで知識を得ることもあるでしょう)時か、今の自分のどうしようもない不満をおさえきれずに、はけぐちを弱くて、ひけめを感じている母に向けることがあるでしょう。前者だと「親への恨み」が募っていきますし、後者も、暴力を振るった後で、家庭が暗くなってさらに自己嫌悪が募って、どちらも、自分にとって大切な家庭を崩壊させますので、ひきこもり、病気(うつ病や不安障害など)も改善しません。自分が生活する基盤である家族を攻撃するのは、自分の足元の崩壊になります。
 その方向ではなくて、ひきこもり、DVは、心の病気や心の弱さが背景になっている場合があるので、それを克服するために、本人は(自己否定、他者攻撃のほかの)何をすればいいのか真剣にとりくまないと、ひきこもり、DVがながびき、種々の悲劇(さらに深刻な病気、非行犯罪、自殺、家族内殺人など)が起きることになるでしょう。
 親もひきこもり、心の病気を理解すべきです。ひきこもり状態、無就業状態になっている子を、やみくもに責めても、心の問題があれば、本人には、社会復帰の行動ができないので、理解してくれない親に不満をいだき、怒り、恨むこともあるでしょう。 メンタルな面の対策が行なわれた上で、復学、就職のことになるでしょう。本人も親も、メンタルな問題がないかを理解して、それを調べてもらうことから始めるべきでしょう。それにしても、それを調べる組織、つまり、復学・就労支援の前段階の支援をする仕組みが、地域には、ほとんどありません。患者会、ひきこもりの会などに相談することから始まり、さらに、そこに、治す仕組みがないならば、自分の地域でさがす、自ら作るということになるでしょう。
 こういうひきこもり、DVの支援は、心理的な問題があるので、薬物療法だけではうまくいかないことが多いです。克服するのに長い時間がかかるので、地域での相談、支援の仕組みを作りたいものです。地域には、こういうことに一度は悩み、そして、克服した人がいるはずで、そういう人たちの経験をいかした支援の仕組みを作れないものでしょうか。そういう挫折体験のない人は、何がよかったと思うか、それを助言することで支援できます。子育てが終わった女性、なにとか定年までこぎつけたシニアなど、地域の支援できることがあります。少数では、小さなことしかできませんが、多数ならば、種々の支援プログラムを提供できると思います。  中核となる心理療法のスキル(マインドフルネス心理療法)があるので、ある程度、できると思います。