狭義の「ひきこもり」は病気ではない

精神科医の磯部潮氏(*1)によれば、狭義の「ひきこもり」は、病気ではない(だが、「回避性パ ーソナリティ障害」「社会恐怖」という診断名がつく場合多いという)。
 ひきこもりは、病気ではないが、しかし「回避性人格障害」「社会恐怖(社会不安障害)」という 診断名がつくこと多いという。その他、「境界性パーソナリティ障害」「自己愛パーソナリティ障害 」「強迫性障害」などの場合もあるという。
 もちろん、先生の言葉に傷つけられた、クラスメートに傷つけられた、種々のプレッシャーから、不登校になって、ながびたという、どの障害でもない場合(だが、意欲がない、無気力は、ひきこもりがながびいて、うつ傾向が生じている可能性も捨てきれない)も多いだろう。そういうものや、パーソナリティ障害は(薬物療法を行なうような)「病気ではない」。ひきこもりでは、日 本では、助言しないカウンセリングが用いられるという。話しを気長に傾聴して、変わるのを待つと いう。
広義の「ひきこもり」
 広義の「ひきこもり」状態には、うつ病、不安障害などによるものがある。だから、ひきこもり状 態の分析には、慎重なアセスメントが必要であって、ひきこもりと心の病気が重複する場合、積極的 な心理療法ならば、早く改善できる場合があるかもしれない。病気でないひきこもりも積極的な心理 療法(弁証法的行動療法など)で改善する場合もあるだろう。対応が遅れると、ながびかせることに なる。
 病気でない「ひきこもり」がながびいていると、心の病気(うつ病、過食症など)になっていくこ とがある。その場合に、傾聴するカウンセリングでしか対応しないカウンセラーは、お手上げとなり 、薬物療法を行なう医者にまわすというのも残念な対応である。アメリカでは、重症のうつ病でさえ も心理療法で治す。認知療法、対人関係療法、弁証法的行動療法などで、そういう心の病気が治ると いうのだから、カウンセラーは全く行なわないというのではなく、カウンセラーが、今後、傾聴カウ ンセリングに加えて、積極的心理療法をも習得すれば、そういう段階に悪化していくのを防止したり 、治療もできるのではないのか。
 人は複雑である。人間が決めた枠にはまるとは限らない。改善法も柔軟性をもって研究していかな いと、ひきこもりや自殺の改善に、限界があるだろう。だが、医者やカウンセラー志望の人以外から 、心理療法の習得を希望する人は少ないだろう。やはり、医者や臨床心理士に期待したい。
 ただ、活躍中の医者や臨床心理士は、忙しい、新しい心理療法を習得する余裕がない、とも言われ ている。若いカウンセラーや、ひきこもりの人の家族が中心になって、その治療法を研究するということも考えていいので はないか。若いカウンセラーは新しい心理療法を、親御さんは、自分の子どもの問題だけを研究すればいい。長く研究していれば、積極 的に治療できる専門家となるだろう。分析、評論できるカウンセラー、心理学者は多くても、それだけでは、解決しない。治す力量ある人がふえないと問題は解決しない。つまり、「あの人は境界性パーソナリティ障害だ」とアセスメントできる人が、それを治せるわけではない。分析、評論できる人が、治すスキルを持つわけではない。評論家だけではいけない。治療者がいないといけない。
 ひきこもりに多いというパーソナリティ障害と社会不安、その他(いじめなど)の原因では、かなり違うので、関心のある人が別々に取り組んでいってもよいだろう。分担すると、早くスキルが向上するだろうから。