CBASP=アメリカの新しい心理療法
(慢性うつ病の新療法:CBASP)
監訳者序
アメリカで開発された慢性うつ病の心理療法の概略をみていく。
「監訳者序」(古川氏)に、次のことが記載されている。
- 2000年5月の"New England Journal of Medicine"にCBASPが紹介された。慢性うつ病患者662人に、無作為割付比較試験を行った結果、薬物療法との併用で、慢性うつ病患者の8割以上が反応を示し、うち半分は寛解
- (A)薬物療法(55%)、
- (B)CBASP(52%)の単独で、同等の効果があったが、
-
(C)両者併用では反応率(85%)が2倍近くまで上昇した。
- うつ病の時点有病率は3〜5%、生涯有病率は15%(女性は20%、男性10%)
- ハーバード大学の研究では、人類の障害(生命の短縮または生活の質の損失)の原因の中で、
- 1995年時点では、第4位
- 2020年には、第2位になると推測
- 「伝統的な精神医学ではうつ病エピソードは一つひとつは比較的治りやすいとされてきたが、実際には10〜20%以上の人で2年以上持続し、慢性化することがわかってきている。」
- 2004年6月25〜28日、著者のマカロウ教授を招聘して、名古屋市立大学で、ワークショップを開催した。
- CBASPは、維持治療においても、再発を予防し、残遺の症状を軽減する効果がある。
- この試験にかかった費用は、30億円。
- 本書は、主に治療者向けの著述。
- この心理療法は、アメリカNIMHの助成で、パーソナリティ障害や物質使用障害を並存する慢性抑うつ状態に対する大規模な無作為割付比較試験が行われているらしい。
(大田注)上記に記されているように、これは、患者向けの書物ではない。患者が読んでも治るような書き方ではない。医師、カウンセラーが、これを習得して、実施してくれるのを待つことになる。この心理療法を行うことのできる人の資質は、11章に記載される。医師、カウンセラーなら誰でも
できるわけではない。
「慢性うつ病の精神療法〜CBASPの理論と技法」
原著者:ジェームズP・マカロウ、
監訳者:古川壽亮(名古屋市立大学)、大野裕、岡本泰昌、鈴木伸一
発行:医学書院、2005/11/1、定価:5775円
CBASP=Congnitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy; 認知行動分析システム精神療法
(慢性うつ病のみに開発された精神療法である)