慢性うつ病の従来の治療法の効果
CBASP=アメリカの新しい心理療法
(慢性うつ病の新療法:CBASP)
第2章 慢性うつ病患者とCBASPプログラムについての序説
アメリカで開発された慢性うつ病の心理療法の概略をみていく。
第2章に、慢性うつ病の従来の治療法の効果とCBASPの特徴が述べられる。
まず、慢性うつ病の従来の治療法の効果について。
慢性うつ病は、薬物療法でも、心理療法でも治りにくいという。認知療法でも治りにくい。
なぜ、また新しい心理療法か
これまでに精神療法のテクニックは400以上提案されている。だが、慢性うつ病患者には、みな効果がない。
「私がCBASPを今回提案するのは、私の見たところいかなる治療モデルも、精神療法家が慢性うつ病患者に接する際に直面する特有の問題の解決には用いることができないためである。」(8頁)
」
慢性うつ病患者の薬物療法
慢性うつ病を「治療抵抗性」といい、治療に反応が少ないとされる。たとえ治療に反応したとしても、回復率が高くない。
最近終了した薬物療法の臨床試験(ファイザー製薬が資金提供)の結果が報告されている。623人の慢性の大うつ病と重複うつ病の患者に行われた、sertraline(SSRIの一つ)、イミプラン(三環系)の無作為割付二重盲検臨床試験(12週間)の結果(9頁)。
- 完全回復した者は17%(623人中105人)
- 部分的に反応した者は35%(623人中217人)
- 反応しなかった者は48%(623人中299人)
慢性うつ病患者の認知行動療法
Thaseらは、男性の慢性うつ病患者62名に、16週間の認知行動療法(CBT)を用いて治療を行っている。
「慢性うつ病患者のCBTへの反応は、急性期に比べ、ゆるやかで不完全である。」(9頁)
併存症
他の障害が併存していることもある。
慢性うつ病患者は、一般医療サービス(痛みなど)の高頻度の利用者である。(11頁)
Kayeら( 1994 )によれば、50%近くの慢性うつ病患者が、パーソナリティ障害を伴っていた。(11頁)
自然寛解は少ない
慢性うつ病は、治療しないと治りにくく、自然寛解は少ない。
「慢性うつ病は、治療することなしに自然寛解に達することがあまりない( McCullough ら, 1988, 1994a )。治療されていない群では、自然寛解率が低い(13%未満)だけでなく、患者はいったん寛解しても、2〜4年の間に再発することが多い。」(11頁)
慢性うつ病患者は、薬物療法だけでは、治りにくく、自然寛解は少ない。そこで、開発されたのが、CBASPであるという。
(大田)
他の治療プログラムは効果がないというが、マインドフルネスは考慮されなかったようである。すでに見たように、マインドフルネスは、アメリカの心理療法家がとりいれて慢性うつ病患者の一部にも効果がみられている。CBASPは「状況分析」を重視したカウンセリング手法であるが、患者が状況分析を行う場合に、マインドフルネスは効果を発揮すると思う。私どもの自己洞察瞑想法にも「機能分析」がある。マカロウ氏の手法に、マインドフルネスを取り入れた手法をおこなえば、どうなるだろうか。治療効果がもっと高まるだろう。
「慢性うつ病の精神療法〜CBASPの理論と技法」
原著者:ジェームズP・マカロウ、
監訳者:古川壽亮(名古屋市立大学)、大野裕、岡本泰昌、鈴木伸一
発行:医学書院、2005/11/1、定価:5775円
CBASP=Congnitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy; 認知行動分析システム精神療法
(慢性うつ病のみに開発された精神療法である)