CBASP=アメリカの新しい心理療法
(慢性うつ病の新療法:CBASP)
第3章 慢性うつ病患者の精神病理を理解する
アメリカで開発された慢性うつ病の心理療法の概略をみていく。
第3章に、慢性うつ病患者の病理が説明される。早発性と晩発性で異なる。
早発性と晩発性
早発性のうつ病は21歳以前に始まる。晩発性のうつ病は21歳以後の発症である。
両者について、多くの説明があるが、ごく一部を引用しておく。
思考、感情や行動の構造について大人として成熟しているかいなかのちがいがある。
早発性
「早期の虐待が早発性のうつ病患者の構造的な障害の原因となっているという見解を支持する研究は存在しない。」(46頁)
「実証的なデータは欠けているが、私が面接中に観察した早発性の成人患者の行動から導き出した推論に基づいて、病因に関する仮説を2つ提示したい。
[仮説1]ストレスが著しく強くて個人的なダメージを与えるような虐待環境のために、早発性の患者は小児期の対人的・社会的「心構え」のまま成人期に入っている。
[仮説2]早発性の患者の行動様式は、構造的な障害を示している。彼らは日々の生活のストレスに効果的に対処する能力がほとんど身についていない。」(47頁)
晩発性の患者は、豊かな感情を経験して、成人して、その後のストレスによって発症した。
晩発性
「晩発性の患者は、一人ないし複数の大人に愛される環境で成長しているし、成長を助けるような関係も築けている。これらの患者は、先行する気分変調症を伴わないことが多い。また、患者は臨床家に、初発の大うつ病エピソードが25歳頃に出現したと語ることが非常に多い( McCullough, Kaye, 1993)。そして、彼らは、うつ病の原因となったストレスの強い出来事を特定できることのほうが多い。最近の研究からは、ほとんどの晩発性の症例が、初発のうつ病として治療を受けて完全寛解していない成人患者の20%に含まれることがわかっている。エピソード性の障害が慢性の経過をとることになるのである。」(49頁)
「改善しないうつの情動状態のために、晩発性の成人患者は自分が住む世界に対してはどうすることもできないし(絶望感)、問題を解決することもできない(無力感)と結論づけるようになる。コントロール不能の不快気分(大うつ病)による「その場の」苦悩は強烈で、構造化されている患者の正常な世界観が崩されていく。」(50頁)
「かつては適切に世界全体を見ることができていた視点は、強い感情の衝撃によって内部崩壊し、患者は他者から離れて、内に籠もるようになる。有害な晩発性のプロセスは、成人の患者を無力感や絶望感、そして将来がないという感覚に陥らせる。」(51頁)
「慢性うつ病の精神療法〜CBASPの理論と技法」
原著者:ジェームズP・マカロウ、
監訳者:古川壽亮(名古屋市立大学)、大野裕、岡本泰昌、鈴木伸一
発行:医学書院、2005/11/1、定価:5775円
CBASP=Congnitive-Behavioral Analysis System of Psychotherapy; 認知行動分析システム精神療法
(慢性うつ病のみに開発された精神療法である)