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ストレス緩和プログラム
第一、はじめに
第二、医療センターで実施している内容
第三、医学的効果
第四、ストレス緩和プログラムが重視している原理
第五、ストレス緩和プログラムとは−まとめ
はじめに
ストレス緩和プログラムとは−
- アメリカ、マサチューセッツ大学医療センターのジョン・カバト・ツィン氏が開発したプログラム。
- 正式には、ストレスリダクション&リラクセーション・プログラム。
- 医療センターの医学部門で、実施されている。(精神科ではない)
○参考書:
『心ひとつで人生は変えられる』ダニエル・ゴールマン編著、徳馬書店。
[ ]は、この本のページです。
本稿は、この本の中で、ツィン氏が語っているのを要約したもの。
医療センターで実施している内容
- 医療センターに通院している患者のうち、ストレス関連の病気の患者に、
このプログラムを説明して、希望する人に実施している。 [150]
- 医師や医学生にも実施している。自宅での実践は15分。[146、181、182]
=愛、活気あふれる生活の重視、気づき、がこのコースの精神。
- 患者には、八週間、毎週1回、通院。2時間半。1クラス30人。[152]
●主な三つの技法
その主たる技法は、
マインドフルネス瞑想法というが、主なものは、3つある。
- 1、ボディスキャン=仰向けに寝て行う。毎週6日、2週間、一日45分。[159]
つま先から始めて身体の部位の感じを意識する。[158]
- 2、正座瞑想=正座し、呼吸に意識を集中する。何の判断もしない。[160]
からだ全体を意識、あるがままでよいと感じる。[160]
呼吸、からだ全体、音、こころの状態、思考の流れ、を観察。[161]
対象を定めない瞑想を行う。難しいので短時間。[162]
- 3、ハタヨーガ=ほかのヨーガと異なり、マインドフルネスをベースに。[162]
●ほかの補助技法
- 1、2週目
- 飲食瞑想=レーズンをゆっくり食べながら、舌などで感じることに意識を向けている。 [164]
- 立位瞑想=バスを待つ時、地面にふれた足の感覚、呼吸に意識。[165]
- 皿洗い瞑想、ゴミ出し瞑想、掃除瞑想、シャワー瞑想。[165]
- 話し方瞑想=声の調子、相手との距離、相手の話を聞くなど話す時意識[165]
- 3週目
- 毎日、楽しい出来事に気づくこと。楽しい瞬間に楽しいという感情に気づく。その時の身体感覚、浮かんだ考え、感情、誘発された行動を意識[165]
- 4週目
- ストレスや不快な出来事に気づく。その時の身体感覚、思考、感情、行動を意識。気づくだけにして、善し悪しを判断しない。[166]
- 6週目=センターで150人一緒に8時間沈黙して、瞑想、歩き、食事。[153]
- [歩く瞑想]も積極的に指導される。
○自宅で行う課題。
一日に45分、週6日、実践。[152]
クラスで習った技法を復習する。
○8週間のプログラムが修了した後は、自分で、好きな手法(ボディスキャン、静座瞑想、ハタヨーガ、歩行瞑想などのうち)を毎日45分行うことを継続する。
第三、医学的効果
★実施者の数
- ある二年間の成果=8週間のコース
- 1200人の患者、1155人が医師から当プログラムを提案。
- 75%=最初の面接を受ける。 90%=プログラム入会登録。
- 92%=実施。 86%=コース終了。 [171]
★効果=コース終了前後
- 様々な症状からくる痛みは、25%減少。 [172]
(およそ8年間、痛みに苦しんでいた人が多いが改善)
→(参照)
ストレス緩和プログラムの実践で痛みが軽減
- 心理的症状は、32%減少。 [172]
(怒り、不安、抑うつ症状、心気症的障害など)
- ストレスへの長期的な耐性、人格特性 [173]
(ナチスの強制収容所の生存者を研究するために開発された検査)
- 一貫性意識
- わが身に恐ろしいことが起こった時に、その意味を把握できる能力。プログラム終了時、平均7%増加。
(この値は、人格心理学者はきわめて大きな変化と評価)
- すなわち、深い精神性を変化させた。[173]
- 痛みがあっても、活力を損なうことなく、痛みとともに働くことができるようになる。[174]
- ストレス耐性が平均6%増加。 [173]
- -ものごとをコントロールできるという意識
- -生き生きと日常生活を送るいしき
- -変化が起きてもそれをやりがいとみなす能力
- こころの深層部で大きな変化が起きたことを示唆する。
- 一体意識=帰属意識や連帯感。免疫力を高める。[174]
●パニック障害、肺疾患、皮膚病、などで改善が見られた。 [177-180]
第四、ストレス緩和プログラムが重視している原理
上記のような技法にとどまらず、実践的な生き方、考え方で、重視していることがある。[153-157]
- 判断しない
ただ自分の感覚などを観察するだけである、良い悪いの判断をしない。
- 辛抱する
辛抱して観察すること、はっきりみること。
- 受け入れる
他の人は自分よりうまく進んでいるとか比較しない。
一瞬一瞬の体験をそのまま受け入れる。
- 信頼する
自分自身の深い部分(自分の創造性や能力)を信頼すること。
o外部の権威を信頼するのではない。
- 努力しない
到達目標を持たない。
o動悸、不安、痛みをとり除こうと努力しない。
症状、問題に対処するには、判断を保留する。
- 初心
=一瞬一瞬がつねに新しいという意識
- 「この技法がどんなものかわかった」とか、
「ある地点にたどりついた」とか、
「以前に見たことがある」とか、考えない。
- 良い体験でも、悪い体験でも、未来に結び付けない。
「今日はよい実践ができたから、明日もよい実践ができるだろう」と考えない。
- 執着しない
はっきりとみるだけで、あるがままにしておく。
わきへ押しやるのではない。
人は知らず知らず執着している、執着に気づくだけでよい。
これはこれまで持っていなかった智慧である。
- 寛大、慈悲、共感的喜び
第五、ストレス緩和プログラムとは−まとめ
まとめると、こうなる。 [157]
- こころのありかたの特質を導き出す能力。
- 生活全体を実践の場にする(一時的に意識を操作するのではなく、
「気づき」の連続性を養う。)
- こころの特質を思い起こす能力(何が起こっても、良いことでも、悪いことでも、執着しない。はっきりみる。)
- 自分の病気の患部への注意から離れることができるようになる。[159]
- 深いリラクセーションを体験する。[159]
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