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    アメリカのマインドフルネス心理療法

    カウンセラー(セラピスト)も自己洞察スキルが必要

     マインドフルネス心理療法は、セラピストが、他の心理療法のように「技法」を知っているだけでは、充分に、効果を発揮しないようである。 心の使い方が違う。瞑想法的である。自己の種々の精神作用を洞察し、その基礎となる内奥の場所を自覚しながら行動している。 この心の使い方が、うつ病や不安障害、依存症、家族の不和緊張などを改善するので、このような心の自己洞察法をクライアント(患者さん)にすすめる。 クライアントにすすめるからには、自分が率先垂範しなければならない。治療技術の向上のためにも必要である。たとえば、坐禅をしない禅僧が坐禅を指導できるはずがない。ゴルフをしない人がゴルフを指導できるはずがない。マインドフルネス心理療法は実践的なのである。現在進行形での心のありかたである。 理論を学習しただけのマインドフルネス研究者はその実際を知らない。 セラピスト自身が、日常生活で、マインドフルネスやアクセプタンスを実行する生活を送るのが必要であるようである。だから、この心理療法を熟練するセラピストは多くはないかもしれない。
     アメリカでは、アクセプタンス、マインドフルネスの自己洞察法をとりいれた行動療法が盛んに研究されている。そこでは、クライエント(問題、病気をもっている人)に、自己洞察法のスキルを指導するのであるが、実は、それを教えるセラピスト(カウンセラー)自身が、それを実践している人の方がすぐれて、よく、クライエントを治癒に導くという認識が高まっている。
     カウンセラーが、自己洞察のスキルを持っていないと、むつかしい心の病気を治癒させることはできないということである。クライエントと対話していると、クライエントは、種々の反応をする。クライアントによっては、カウンセラーの言葉、応対、技法に、「激しい理想化とこきおろし」のゆれうごく対人関係様式を示すこともあり、面接場面や、メールや電話のやりとりでも、感情的になること、激しく怒ることが起きる場合もありうる。そういう場面で、カウンセラーが、感情的になったり、恐怖を感じたり、おちこんだり、しかねない。むつかしいクライエントを扱うと、カウンセラー側が、疲弊する。カウンセラーが、うつ病になることもあるだろう。
       だが、アメリカでは、そういうこともある(すべてではない)境界性パーソナリティ障害(BPD)にさえも、瞑想(マインドフルネス、アクセプタンス)をおりこんだ、弁証法的行動療法(DBT)で成功をおさめている。BPDも治せる障害なのだ。BPDの患者が、一時、感情的になっても、DBTを心得たカウンセラーならば、治療を続行できるだろう。DVをする加害側の人も過去のDV、虐待の被害者だったことが多い。そういう人の救済ができる道が開かれたようである。この点でも、日本では激しい感情のコントロールが必要な人の救済が遅れているのだろう。  カウンセラー、セラピストになる人は、自分に何か弱さを感じて、心理学に関心を持って、その延長からカウンセラーになった人もいるだろう。そういうカウンセラーは、臨床の場面で、感情的な場面に遭遇すると不安になるかもしれない。「逆転移」の問題がある。カウンセラーは、自分の心を洞察して感情、身体反応などにふりまわされて、カウンセラー自身が、クライエントに対して、非機能的な言葉、態度をとらないようにしなければならない。また、金銭的、恋愛的、自己保身、そのほか種々の欲求、衝動がある。これを洞察して自制しなければならない。
     またカウンセラーも疲れる。様々な苦悩をかかえたクライアントとあい、応対する。すんなりカウンセリングがすすむ場合だけではない。クライアントの色々な反応に、カウンセラーがストレスを感じる。葛藤がひどくなる場合もある。自信喪失も起きる。治療やクライアントを回避したくなる。こうした時に必要になるのはカウンセラー自身の心の洞察だろう。こここそ、クライアントがうつ病になったり、問題行動を起こす場面に類似する。
     カウンセラーの倫理、精神科医の倫理、支援者の倫理、および、カウンセラーの燃え尽きの予防は、長い時間をクライアントと共にすることの多い心理療法者には特に強く求められる。ここに、セラピスト自身の自己のマインドフルネス、アクセプタンスの実行が求められる。言うはやすく、行うのは難い。少しづつでも、そのスキルを向上させるのは、セラピスト自身の日々の、マインドフルネスの実践であろう。

     心の病気が治らない人が多い。その難しい病気をも治す新しい心理療法を研究、開発しているアメリカの心理療法者たちは、カウンセラーは、自己洞察のスキルを訓練した方が、すぐれたカウンセラーになるだろうと予測している(注1)。  こうして、セラピストに、自己洞察スキルの体得が必要と主張されようとしている。従来の療法に執着する心理療法者は、この流れを受容しないであろうか。だが、本当に、クライエント(患者)の利益を重視する、つまり、本当にクライエントの病気を完治させようとするならば、カウンセラー、セラピストも、自分自身に変革を必要としている(新しい療法を身につけよ)のだ。自分の学んだ従来の心理療法にのみ執着して、クライエントを完治させられないという状況を打破するために、カウンセラーが、新しいスキル、新しい心理療法を学べというのである。身体の医学も日々、進歩している。精神医学、心理療法も日々進歩しているのだ。古い心理療法にのみ執着して、治すことができないカウンセラーは時代遅れなのだ。アメリカの心理療法の流れは、ここまで来ている。

     マサチューセッツ大学医療センターでは、相当以前から、すべての医者が、マインドフルネスの実践(自己洞察法の一種)を行うという。アメリカでは、上記のように、臨床心理関係の研究者も、自己洞察スキル訓練の必要性をいいはじめた。日本でも、臨床心理士、カウンセラー、精神科医になる人は、自己洞察のスキル訓練をする時代が来るだろうと思う。そうでなければ、心の病気で苦しむ人、自殺する人が減少しない。
     マインドフルネス心理療法(自己洞察瞑想療法もその一つ)は、セラピスト(カウンセラー)の実践体験が重要であるから、マインドフルネス心理療法そのものの臨床経験によって、扱える障害に差が生じる。適用がやさしい問題(マインドフルネス心理療法の適用がやさしいのであって、問題はやさしくはない。うつ病は深刻である)からとりくむだろう。マインドフルネス心理療法の経験の浅いセラピストは、まず、うつ病について取り組むだろう。次に、他の障害の治療法(マインドフルネス心理療法をもちいる)を研究、習得して、その治療にとりくむだろう。
    INDEX= アメリカの新しい心理療法
    =マインドフルネスとアクセプタンスの技法を重視した第3世代の行動療法