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欧米の心理療法の潮流=ACT(1)
マインドフルネス心理療法はマインドフルネス、アクセプタンスの技法を用いる点
で類似性がある。弁証法的行動療法(DBT)、マインドフルネス認知療法、行動活性化療
法(BA)、ACT、自己洞察瞑想療法(SIMT)などがある。
こういうマインドフルネス心理療法でも、哲学や理論が違うのに、マインドフルネス
、アクセプタンスを用いるので、同じような精神疾患に効果があるように思える。
しかし、やはり詳細になると違いがある。そのために、
得意とする領域(=効果の違い)が違ってくるだろう。
- マインドフルネス認知療法は、重症のうつ病エピソードにある間は適用しない。
3回以上再発したうつ病で軽くなった段階に再発予防効果がある。そうなると、重い抑うつ症状、鉛様麻痺感が
ある人には効果がないだろう。まだ寛解ではないから。
- ACTは、思考の抑制はパラドックスであるとして、思考の抑制は用いないという。
(一方、SIMTは、思考の抑制を用いる。嫌悪的思考の抑制は、うつ病の治療には重要だから)。
- 「ACTの基盤である応用行動分析」「応用行動分析は伝統的にうつや不安、ストレ
スを扱うことを避けてきました。」
(参考書49頁)。
ところが、行動活性化療法は、うつ病を治すのが主な目的。SIMTも、うつ病の治療から開始した。
- ACTは症状を軽くすることを目標とはしない。
「苦痛を取り去ることを目的にした治療に対するアンチテーゼがACT
なのです。」
(42頁)一方、SIMTは症状を軽くする。鉛様麻痺感や抑うつ症状は社会生活を障害して、クライエントの苦痛が大きい。
-
「ACTは1週間に1回、1時間のセッションならば、数回程度で一区切りをつけるの
が一般的です。それ以上になると治療に来ること自体が目的化してしまいます。」(
52頁)
これでは、うつ病、不安障害は治せないだろう。治すことを目的としないという。うつ病は病理であり、治せる病理ならば治す援助を目標にしたい。治すのに、半年から2年かかる。
余談
最近ACTの翻訳書が次々と出版されているので、うつ病の治療、自殺予防対策にもなる
かと思ったのですが、こうしてみると、ACTは、うつ病の治療には積極的ではないよう
に見えます。自殺が多いので、うつ病を治す心理療法があればいいのに残念です。うつ病を「治す」ためには、弁証法的行動療法、行動活性化
療法、自己洞察瞑想療法(SIMT)などがいいのでしょうか。何度も再発したうつ病の再発予防には、マインドフルネス認知療法が。
うつ病は、思考の抑制も重要です。ネガティブな思考を抑制しないと、抑うつ症状
、鉛様麻痺感が悪化して、深刻な状況になりますから。抑制といっても、内容を変えるのではなく、価値実現の行為に意識(注意)を向ける力です。
ACTは思考の抑制の技法を用いないといいます。また、症状を軽くする方針はないといいます。アクセプタンスが主だといいます。しかし、
メランコリー型うつ病の抑うつ症状、非定型うつ病の鉛様麻痺感は症状が軽くならな
いと社会復帰できません。心理的価値実現の反応パターンで症状が軽くなるものもあり、それを用いない手はない。神経生理学的フュージョン(連合)の考慮です。
パニック発作も発作が起きる間は、つらいです。アクセプタンスすればいいはずだ
というわけにもいきません。発作は症状が軽くなることも大切です。
マインドフルネス心理療法にも、流派によって哲学の違いがあって、適応症も違うようです。
よく検討することが大切でしょう。
マインドフルネス心理療法といっても、こんなに違いがあるのは不思議です。背景の理論が重要であることを示しています。
病気を治すという哲学のない坐禅、呼吸法も<病理からくる症状を軽くする>心理療法になりません。
病気を治す目的をいれない西田哲学だけの哲学では心理療法になりません。
病気を治す方針を持つ脳神経生理学でないと、心理療法になりません。
どのマインドフルネス心理療法も、まだ新しいから発展段階です。自己洞察瞑想療法( SIMT: Self Insight Meditation Therapy )も、毎年、改訂を加えていて、課題が多い。
習得しやすいようにとか、文書化していない技法の文書化とか、全般的なうつ病、不安障害のほかの特定分野への適用拡大などがある。
ACTはその哲学から、うつ病の「治療」には消極的のようですが、ACTの手法は豊富であり、うつ病や不安障害、依存症などの病気を「治す」という目的でも用いることができると思います。だから、<手法>は利用させていただくのがいいと思います。哲学、理論の違う心理療法(BA、SIMT、DBTなど)で用いることができます。それぞれの領域に役に立つ技法を取捨選択する方策です。
その時に、一貫した哲学なり、全体をつらぬく立場が必要になると思います。
ACTは行動分析学、DBTは何かの弁証法、BAは活動が活動を呼ぶという哲学、SIMTは禅的な東洋哲学(西田哲学)と精神疾患に関わる脳神経生理学、CT(認知療法)は認知が行動を決める、などです。こういう哲学をもって、非機能的行動や病理を分析して、価値実現の反応パターンや症状軽減の手法(治療法)を選択適用していきます。その時、マインドフルネスやアクセプタンス、コミットメントなどの技法が用いられます。
(参考書)
「こころのりんしょう alacarte」2009Vol.28 特集ACT、星和書店。