マインドフルネス心理療法の目次
構造化された自己洞察瞑想療法(SIMT)
患者さんはこのような課題を6−10カ月行っていく(セッション1から10)
59の【洞察実践】と【洞察を深める】技法
エビデンス
自己洞察瞑想療法(SIMT)による10段階のトレーニング
自己洞察瞑想療法(SIMT)は、日本で開発されたマインドフルネス心理療法です。 坐禅、西田哲学を参考にして、日本人に親しみやすいM&Aです。うつ病、不安障害の脳神経生理学との関係も考慮したので、改善効果がみられます。 日本の伝統文化に流れる自他不二の心、自己を無にするほどその人の本来の力が発揮されることの意味もわかる、深い心の探求の入門にあたります。それで、心の病気が治り、希望すれば、さらに深いM&Aに入っていくことができます。
2012年秋に出版される著書で詳細を記述しますが、 浅いマインドフルネス、アクセプタンス(M&A)の手法からやや深いM&Aを段階的に、訓練していきます。 これを真剣に実践すれば、長期化したものでも、重症であっても、うつ病、非定型うつ病、不安障害、依存症などが改善します。この10段階の中で、具体的なM&Aの59の手法を実践します。 59のリストを次に掲載します。 59のM&Aは、浅いものから深いものまであります。詳細な説明は、 著書で公開いたします。
支援者のスキル習得
重いうつ病、不安障害までも改善するほどのこの心理療法を習得する(支援者になる)ためには、半年ほどの研修が必要です。
このほか、医師や精神科看護師、かかりつけの内科医の看護師が患者さんに提供できる ような簡略版の自己洞察瞑想法のテキストを2013年早々に作成します。 病院の看護師が患者さんに提供されることを提案します。高度の心理療法を必要とする患者さんはそのスキルを習得した心理職などを紹介すればいいと思います。
自己洞察瞑想療法(SIMT=マインドフルネス心理療法)
各セッションで学ぶこと
★第1セッション 「基本的なトレーニング」
自分の心をさまざまな方面から現在進行形で観察するが、それを行うために、呼吸法が適しているので、基本的な呼吸法を習う。
呼吸法を行いながら種々の心の洞察を深めていくが、まず注意作用の訓練を行う。意識されるものはすべて自己の心の中に包まれているという感じを味わう。
呼吸法だけではなく、行動中でも自分の心を観察することが問題の早期改善になる。行動中に行う洞察訓練を「行動時自己洞察」という。セッション1では、思考しているかいないかをチェックしたり、行動中に感覚に意識を向けている練習をする。
★第2セッション 「いつでもできる呼吸法」
呼吸法の中で、すべてが「今、ここ、自分の心」であることを観察によって確認する。
自分の心のさまざまな作用を現在進行形の観察によって知り名前をつけられるようにする。
意識(注意)を今ここの瞬間に自分の大切なことに向けるスキルの訓練を行う。 また、運動や社会的活動をたくさん実行すると、心の病気の改善効果があることを理解して日課とする。
★第3セッション 「感情を知る」
想起(思い出し)によって起きる思考からつらい感情が起きることが多いことを理解して、想起に続く思考を抑制するスキルを訓練する。
つらい思考が開始されるきっかけが病気の症状であることが多いので、症状と他のことの区別を理解する。症状を嫌悪して思考しても悪化するので、症状を感じる場合に行う呼吸法を学ぶ。
★第4セッション 「人生の価値・願い」
心の病気を治すためには、自分の願い(人生の価値観)を持つことが大切である。 課題を実行する動機を高めるために、毎日、呼吸法を行いながら自分の願いを確認する。
呼吸法の中で、さまざまな心理現象とそれを作り出す作用の区別を観察によって理解する。
★第5セッション 「日常生活を薬に」
早起き、朝日をあびる、朝ごはんを食べる、呼吸法、適度の運動などを日課とする。
2つの心理的反応パターンと脳神経生理学の影響を理解する。心の病気を持続させたり悪化させたりする価値崩壊の反応と改善する価値実現の反応である。
意欲がないのも神経生理学的な影響があり、そのままにしていると意欲が戻らないおそれがあるので、小さな意欲の積み重ねが症状の改善になることを理解する。現実の場面で、今の瞬間の自分の心に何が起きているか現在進行形で観察することを実行する。
★第6セッション 「思考について」
問題や症状を改善するためには思考の扱いが重要であり、自分の心の上で観察する方法によって思考の実態を知る。
思考、感情、行動が相互に影響していることを観察によって知り、不快な感情を起こす思考を少なくするスキルを向上させる。つらい思考もトレーニングすれば、抑制できるようになる。自分を傷つける思考をやめるスキルを身につける。
見えにくい心・本音を観察する。心理作用を起こす、まさにその時に色眼鏡、フィルターのように覆って、思考や行動に影響を与える独断的、自己中心的な評価的判断または行動規範が本音である。そのような本音があることを観察する。
★第7セッション 「不快事象の受容」
人生には不快なことがつきもので、それらを受容し自由な意志で行動することで心の病気を改善し、再発を防止することを理解する。
不快事象を受容して自由意志で行動できる場合と、そうできない場合の神経生理学的な反応を理解する。 生活の中で起きる不快事象の受容にあたって大切な心得を学習する。 学習したことを実現できるように、毎日受容のスキル向上の実践をする。
★第8セッション 「連鎖の解消」
自分の心全体を統括している意志作用について理解し、活性化する訓練をする意義があることを再確認する。特に次のような重要な症状や行動について、改善のために課題を実行する。
@回避行動、逃避行動の改善
A問題行動の改善(依存や強迫、自傷、対人関係をそこなう行為など)
Bフラッシュバック、トラウマ、視線恐怖、注意がそれるなどの改善
C社会的行動の回避の改善
「死にたい」という思いが起こる「希死念慮・自殺念慮」の対処法を学ぶ。
残された重要な症状や問題行動について改善計画を作成して実行する方式を学習して、自主的に改善の実践をしていく準備にはいる。
★第9セッション 「生きる智慧」
つらさをまぎらす苦悩の智慧ではなく、根本的な解決に向けての直観的な叡智について学ぶ。 自己嫌悪、自己否定は思考作用の内容であり、真の自己を表していないことを洞察し、そういう思考を止める(意志的自己の解放)。
すべてを包み映す器、鏡のような内奥の自己を探求して苦悩を新しい目で洞察する。 現前の事実を受け入れて今に生きることを確認する。すべて今ここであり、つらいことでも受け入れて自由意志により行動する。
★第10セッション 「これからの課題」
症状や問題をさらに改善するために、各領域の特徴と改善方針を再確認する。
油断すると症状が悪化、再発するので、症状悪化・再発防止のための心得を学習する。復帰にむけての準備、減薬・断薬の心得を学ぶ。
10カ月経過した段階では、まだ完治に至っていない人が大部分である。さらに改善するために、問題改善に向けた課題を確認する。