機能的文脈主義
「機能的文脈主義は、その分析に対してより実践的で統合的な(integrated)ゴールを選択する
(Hayes et al., 1999)。その統合的ゴールとは事象に対する「予測と影響(influence)」のことである。ここでの「統合的」という意味は、「正確性と視野を兼ね備え、かつ当該のゴールが持つあらゆる側面の達成を目指すということである。つまり、機械主義と異なるのは、分析それ自体を目的としない、かつ全体のバランスを欠いた特定的なゴール達成を目指さないという点である。そのような意味で、機能文脈主義者は技術者(engineer)に例えられる。
その理由は、実践に必要な最小限の知識を持ってゴール達成を目指し、全体的な視点から見てゴールが達成していれば、予測と結果との誤差が生じても、それを許容するからである。また、いわゆる心理的な事象も、有機体( a whole organism )が生起させる連続的な行為と、歴史的(時間的)・状況的(空間的)に規定された文脈との相互作用として捉える。つまり、行動分析学における三項随伴性(「弁別刺激」‥‥「反応」‥‥「強化」)という分析ユニットは、実験者・観察者が恣意的に設定・文節化するものであり、先験的に、かつ個別に、弁別刺激、反応、強化は存在するとは捉えないのである。そのように捉えれば、実験者・観察者も文脈や全体から引き離されることはないのである。」(20頁)
たとえば、感覚、思考、感情、行動という elements に分けて予測と影響を説明するような方法論はそれであろう。だが、そのelemntsは実在とみておらず、ただ移り行く泡のようなもので、治療上、有用であるので element に恣意的に設定して説明するが、単独で存在するものではない。