痛みをマインドフルネスの実践で軽減

 痛みについては、多くの人が悩んでいます。痛みは、自己洞察法とも関連があります。

 マインドフルネスの実践(「自己洞察瞑想療法」もその一つ)は、痛みを軽減する効果がみられる場合があります。
 アメリカでは、1980年ころから、マサチューセッツ大学医療センターの医学博士、ジョン・カバット・ジン氏が開発した瞑想法を利用したストレス緩和法を実践してきた。
 「慢性的な痛みで、なかなか原因をつきとめられない」「検査をしても、痛みの原因はなかなか究明できない」「「医療処置だけではどうしても治る見込みがなく、それでも、「自分から何かをしよう」という意欲をもっている患者」、といった患者(204頁)に、8週間のストレス緩和プログラムに参加してもらう。

 その結果、痛みの緩和については、次の効果が報告されている。 (参考書)

呼吸法などで痛みが改善

 ストレス緩和プログラムの技法は、(1)静座瞑想(坐って行う自己洞察法)、(2)ボディ・スキャン、(3)ヨ−ガ瞑想を用いるが、この3つのどれかを、毎日、実践していると、痛みが軽減する。痛みは主観的な要素で強さが変わる。自己洞察によって、セロトニン神経が活性化するとともに、痛みというものに対する見方、評価、思考との関係づけが変わることにより、以前よりも、痛みにとらわれることが少なくなる。これと、類似の技法、たとえば、「自己洞察瞑想療法」で行われる呼吸法や自己洞察法でも、ストレス緩和プログラムと同様の効果がある。要するに、マインドフルネス(集中や解放、無評価)、アクセプタンス(徹底受容)である。
 片頭痛などの痛みの緩和の薬物療法として、抗うつ薬が用いられるが、セロトニン神経が失調することから起きる「痛み」がある。セロトニン神経は、脊髄後角で、上行する痛みの神経とシナプス接続して、痛みを抑制している。だから、種々の痛みが抗うつ薬で改善することがある。
 また、有田秀穂氏(東邦大学教授)の研究でもわかるように、腹式呼吸法などでもセロトニン神経が活性化する。したがって、抗うつ薬が効かない(患者の体質により薬物が効かない人がいるということは常識であろう。すべての人にきく万能薬はないであろう。)患者であっても、腹式呼吸法などで、「痛み」が改善する人がいる。
 この理由から、マインドフルネス、アクセプタンスの自己洞察法を用いる「自己洞察瞑想療法」でも、痛みが軽減されている。長い間とれなかった、頭痛、胸痛、胃痛などが消失した例がある。